石川県が9年をかけて開発したお米「ひゃくまん穀」。県の資料では「大粒で、食べごたえがあり冷めてもおいしい」品種とされ、令和7年産では石川県のうるち米の1割強を占めるまでに広がりました。この記事では、石川県農林総合研究センターや農林水産省の資料をもとに、ひゃくまん穀の味・特徴・栽培特性・作付けの推移を整理し、令和8年産の商品も紹介します。
・ひゃくまん穀は石川県農林総合研究センター農業試験場が開発した石川県オリジナル品種(系統名「石川65号」)。平成29年(2017年)に一般栽培・販売開始
・県の資料では「晩生」「大粒」「多収」。炊いたごはんは粘りが強く、粒が大きく食べごたえがあり、冷めてもおいしいと評価されています
・令和7年産では石川県のうるち米作付けの11.5%を占め、コシヒカリ・ゆめみづほに次ぐ県内3位の品種です
「ひゃくまん穀」とは|石川県が9年かけて育成したお米
粘り・硬さは編集部の目安(5段階)。食味は日本穀物検定協会「米の食味ランキング」第55回(令和7年産米)。価格は2026年10月9日時点の楽天市場の令和8年産(広告)。お米の品種一覧で全品種を比べる
ひゃくまん穀(ひゃくまんごく)は、石川県農林総合研究センター農業試験場で開発されたうるち米の品種です。育成中の系統名は「石川65号」。石川県議会の広報紙によると、石川県が9年の歳月をかけて開発した新品種で、名称が「ひゃくまん穀」に決まり、平成29年(2017年)10月5日から県内の約250店舗で販売が始まりました。
農林水産省がまとめた石川県の普及活動の事例によると、県はこの品種を平成28年に品種登録し、同年は試験販売として23ha・56戸で作付けされました。翌平成29年から一般栽培が始まっています。開発の背景には、水稲農家の高齢化で担い手への農地集積が進むなか、コシヒカリへの作付けの偏りによる弊害が心配されていたことがあります。コシヒカリ並み、またはそれ以上の農家所得が期待できる県育成の品種として生まれたのが、ひゃくまん穀です。
デビュー時のパッケージは、大きな米粒に「ひゃくまん」の文字で笑顔をデザインしたもので、店頭での目印になりました。県や全農いしかわなどでつくる「米新品種『ひゃくまん穀』普及推進委員会」が、おにぎりの配布や試食会などのPRを続けてきたことも、この品種の特徴です。
| 項目 | ひゃくまん穀の基本データ |
|---|---|
| 育成 | 石川県農林総合研究センター農業試験場 |
| 系統名 | 石川65号 |
| 開発期間 | 9年(石川県議会広報紙より) |
| 品種登録 | 平成28年(農林水産省 普及事例より) |
| 販売開始 | 平成29年(2017年)10月5日、県内約250店舗 |
| 熟期 | 晩生(コシヒカリより出穂が遅い) |
| 特徴 | 晩生・大粒・多収。食べごたえがあり、冷めてもおいしい |
| 作付け | 令和7年産で石川県のうるち米の11.5%(県内3位) |
ひゃくまん穀の味・食感の特徴
石川県農林総合研究センターの資料では、ひゃくまん穀は「食味が良く大粒で、食べごたえがあり冷めてもおいしい」品種と紹介されています。官能試験(人が実際に食べて評価する試験)では「粘りが強く大粒で食べごたえがあり、冷めても美味しい」と評価されていました。
この評価の理由を確かめるため、同センターは成分分析などで米飯の特性を調べています(石川県農林水産研究成果集報 第23号、2021年)。結果は次の3点です。
① 粘りが強い理由:炊飯直後の粘りは、炊くときにお米から溶け出すでんぷんの量と相関があり、ひゃくまん穀はほかの品種より溶出でんぷん量が多いため粘りが強い。
② 食べごたえ:炊いたごはんの粒がほかの品種より大きく、かむ回数と1回あたりの筋肉の活動量が多いため、食べごたえがある。
③ 冷めたとき:炊飯後に20℃で48時間置いたあとも、粘りと硬さの変化がほかの品種より少ない。
| 品種 | 咀嚼回数(口の中から粒がなくなるまでの平均) |
|---|---|
| ひゃくまん穀 | 58.8回 |
| 能登ひかり | 49.5回 |
| コシヒカリ | 48.1回 |
| ゆめみづほ | 46.0回 |
出典:石川県農林水産研究成果集報 第23号(2021)「成分分析等による『ひゃくまん穀』の米飯品質の解明」。東京農業大学の協力による試験です。
デビュー前の資料(石川県農林水産研究成果集報 第19号)では、炊き上がりは「硬く粘りが強い食感」とも紹介されています。石川県議会の広報紙も「粒の大きさが自慢の品種で、もっちりとした粘り強さも合わせ持っています」と書いています。やわらかさで勝負するお米ではなく、粒がしっかりしていて、かむほどに粘りが出てくるタイプと考えると分かりやすいでしょう。
🌾 粒の大きさを数字で見ると
石川県農林総合研究センター農業試験場が平成29年度に行った試験(農林水産技術会議の委託試験)では、ひゃくまん穀の玄米の千粒重(1,000粒の重さ)は移植日によって26.8〜27.4gでした。同じ試験で比べた「あきだわら」は21.9〜22.9g、「あきさかり」は22.7〜23.8gです。試験条件のもとでの値ですが、ほかの多収品種と比べても粒がひと回り大きいことが分かります。
ひゃくまん穀の栽培特性|「晩生」が暑さ対策にもなる
ひゃくまん穀は、石川県でそれまで作られてきた品種にない「晩生」「大粒」「多収」の特徴を備えた品種です(農林水産省 普及事例)。
晩生で暑さを避ける:いしかわ気候変動適応センターの資料(令和4年)では、ひゃくまん穀は主要品種のコシヒカリより穂が出る時期が遅く、比較的涼しい時期に実るため、高温の悪影響を受けにくい品種と説明されています。夏の高温で米が白く濁る「白未熟粒」を避けるため、県は品質低下を招く夏期の高温を回避する晩生品種としてひゃくまん穀を開発した、としています。
作業を分散できる:収穫時期がコシヒカリやゆめみづほより後になるため、大規模に経営する農家にとっては、同じ機械を長く使えて作業を分散できる利点があります。県の懇話会の記録でも、農林総合研究センターが「ゆめみづほ、コシヒカリを栽培した後に農業機械を有効に使いたい」大規模農家が最初の作り手の対象になる、という見通しを示しています。
多収:県の普及事例では「多収」が特徴のひとつに挙げられています。平成29年度の試験では、5月24日に植えた区の精玄米重が709kg/10aでした(同じ日に植えたほかの4品種は571〜827kg/10a)。
一方で、生産者からは「晩生品種を栽培した経験がなく、栽培当初は思うような収量や品質にならず、難しい品種と感じた」という声も出ています。県は地域ごとに技術実証ほを設けて栽培マニュアルを作り、生産者部会を通じて技術を広げてきました。記録的な猛暑となった令和元年は1等米比率が83.9%に下がりましたが、追肥や水管理を見直した結果、令和3年は93.1%まで上がっています。
作付面積の広がり
ひゃくまん穀は、デビュー以降、作付けを大きく伸ばしてきました。
| 年 | 作付面積 | 生産者数 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 平成28年(試験販売) | 23ha | 56戸 | 農林水産省 普及事例 |
| 平成29年(一般栽培開始) | 253ha | 171戸 | 同上 |
| 令和3年 | 1,725ha | 745戸 | 同上 |
| 令和5年度 | 2,100ha | — | 農研機構 追跡調査 |
米穀安定供給確保支援機構の「令和7年産 水稲の品種別作付動向」では、石川県のうるち米の作付けに占める割合はコシヒカリ57.4%、ゆめみづほ21.9%、ひゃくまん穀11.5%で、ひゃくまん穀は県内3位です。県は今後、2,700haへの普及を目標にしています。
なお、日本穀物検定協会の「米の食味ランキング」の産地別表(令和5〜7年産)には、石川県のひゃくまん穀は掲載されていません(石川県はコシヒカリ・ゆめみづほが掲載)。
ひゃくまん穀に合う料理
県の資料が挙げる「大粒で食べごたえがある」「冷めても粘りと硬さが変わりにくい」という性質から考えると、次のような食べ方で持ち味が生きます。
おにぎり・お弁当:石川県議会の広報紙も「おにぎりなどにして後から食べても、とてもおいしく」と紹介しています。県内のPRでもおにぎりの配布が中心でした。
丼もの・カレー:粒がしっかりしているので、たれやルウをかけても形が崩れにくいタイプです。全農いしかわの広報誌では、県内のイベントでひゃくまん穀とJA小松市のカレーが振る舞われた様子が紹介されています。
寿司・いなり寿司:全農いしかわの広報誌によると、新米発売レセプションではひゃくまん穀を使った寿司などの創作料理が振る舞われ、イベントではいなり寿司の試食で「酢飯としても美味しく食べられること」がPRされました。
白ごはん:まずは炊きたてで、粒の大きさとかむほどに出る粘りを確かめてみてください。
ひゃくまん穀を美味しく炊くコツ
基本は、① 精米日の新しいものを選ぶ(お米は精米後から少しずつ風味が落ちます)、② 最初の水はすぐ捨て、やさしく研ぐ、③ しっかり浸水する(目安は夏30分・冬1〜2時間)、④ 水加減は炊飯器の目盛りを基準に好みで微調整、⑤ 炊き上がったらすぐ底から返してほぐす、の5つです。
ひゃくまん穀は粒が大きいお米です。大粒のお米は水を吸うのに時間がかかるので、浸水は少し長めにとると芯が残りにくくなります。硬めでしっかりした食感が持ち味なので、まずは炊飯器の目盛りどおりに炊き、やわらかさが欲しいときに水をほんの少し足して調整するのがおすすめです。研ぎ方の基本はお米の正しい研ぎ方で詳しく解説しています。
ひゃくまん穀の保存方法
お米は乾物に見えて、実は温度・湿度・においの影響を受けやすい食品です。袋のまま常温に置くより、密閉できる容器に移して冷蔵庫の野菜室で保存すると、風味の低下や虫の発生を抑えられます。においの強いものの近くは避け、精米後はおおむね1か月を目安に食べきれる量を買うのが、いちばん失敗の少ない方法です。玄米で買って食べる分だけ精米する方法もあります。新米の時期にまとめ買いするなら、5kg袋を複数に分けて届くタイプを選ぶと、開封後の鮮度を保ちやすくなります。
ひゃくまん穀の人気商品(令和8年産)
楽天市場に出ている令和8年産のひゃくまん穀から、商品名に「ひゃくまん穀」が入り、ほかの品種とのセットではないものを選びました。JA全農いしかわの名前が入った商品のほか、志賀町のふるさと納税返礼品、無洗米などがあります。
JA全農いしかわの名前が入った石川県産ひゃくまん穀。5kg×2袋で、開封後の鮮度を保ちやすい形です。
同じくJA全農いしかわの名前が入った5kg。はじめて試すのに選びやすい容量です。
2kgの小袋。ギフトやのし対応にも対応している商品です。
ひゃくまん穀をもっと見る
※商品は2026年10月時点で楽天市場に掲載されている令和8年産の商品から、商品名に品種名が入っているものを選んでいます。ふるさと納税の返礼品は表示額が寄附額です。
あわせて読みたい
石川県で最も作られているコシヒカリ、県内2位のゆめみづほもあわせてどうぞ。北陸の新しいブランド米では富富富やいちほまれも紹介しています。全国の品種を食感で比べたい人はお米大全|日本のお米の品種一覧が便利です。
まとめ|ひゃくまん穀は「大粒で食べごたえ」のお米
ひゃくまん穀は、石川県農林総合研究センター農業試験場が9年をかけて開発し、平成29年にデビューした石川県のオリジナル品種です。晩生・大粒・多収という、県内にそれまでなかった特徴を持ち、炊いたごはんは粘りが強く、粒が大きく、冷めても粘りと硬さが変わりにくいことが分析で確かめられています。令和7年産では県内のうるち米の1割強を占めるまでに広がりました。おにぎりやお弁当、丼ものなど、しっかりした粒を楽しみたい料理に選んでみてください。
よくある質問
ひゃくまん穀はどこのお米?
ひゃくまん穀の読み方は?
ひゃくまん穀はどんな味?
ひゃくまん穀はおにぎりに向いている?
ひゃくまん穀は特Aを取ったことがある?
ひゃくまん穀とコシヒカリの違いは?
- 石川県農林水産研究成果集報 第23号(2021)「成分分析等による『ひゃくまん穀』の米飯品質の解明」(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/nousei/kenkyu/seikasyuuhou/documents/p26.pdf)
- 石川県農林総合研究センター 要覧2026(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/noken/documents/noushiyouran_2026.pdf)
- 農林水産省 普及活動の成果事例(令和4年度)石川県「『ひゃくまん穀』の生産拡大とブランド化の推進」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_zirei/r4/attach/pdf/r4-65.pdf)
- 石川県議会だより 2017年秋季号(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/gikai/documents/dayori_2017syuuki.pdf)
- いしかわ気候変動適応センター通信 第8号(令和4年6月)(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/ontai/tekiou/documents/letter8.pdf)
- 石川県 食の安全・安心懇話会(平成29年度第1回)概要(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/syoku_anzen/konwa/documents/h29dai1kai_gaiyou.pdf)
- 石川県農林総合研究センター農業試験場 委託試験成績(平成29年度)「水稲生育予測システムの新品種への適応」(https://jataff.or.jp/project/inasaku/pdf/29_5_01-2.pdf)
- 農研機構 令和6年度 委託研究事業 追跡調査 普及事例(c011)(https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/follow_up/pickup/files/R6_nougyo-c011.pdf)
- JA全農いしかわ 広報誌(2019年11月号)(https://www.zennoh.or.jp/is/magazine/pdf/201911.pdf)
- 石川県立図書館 調べ方案内(『石川県農林水産研究成果集報 第19号』の紹介)(https://www.library.pref.ishikawa.lg.jp/file/3082.pdf)
- 米穀安定供給確保支援機構「令和7年産 水稲の品種別作付動向について」(https://www.komenet.jp/pdf/R07sakutuke.pdf)
- 日本穀物検定協会 米の食味ランキング 産地別表(令和5〜7年産)(https://www.kokken.or.jp/data/rank_sanchi.pdf)
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