夏が暑いと、お米の粒が白く濁ります。これが高温障害による「白未熟粒」です。見た目が悪くなるだけでなく、等級が下がり、炊き上がりにも影響します。なぜ起きるのか、何度から危ないのか、産地はどう対抗しているのかを整理します。
① 登熟期の高温でデンプンが詰まらず、粒に空隙ができて白く濁ります。これが白未熟粒です。
② 出穂後20日間の平均気温が27〜28℃を超えると一等米比率が大きく落ちます。夜の暑さも効きます。
③ 2025年は夏の平均気温が観測史上最高。高温耐性品種は24.8万ha(18.2%)まで広がりました。
高温障害とは何か
高温登熟障害とは、稲の実が太る登熟期に高温が続くことで品質が落ちる現象です。現れ方は主に3つあります。
- 白未熟粒:粒の一部または全体が白く濁る
- 充実度の低下:粒が偏平になり、縦の溝が深くなる
- 胴割粒:粒に亀裂が入る
結果として検査等級が下がり、精米したときに砕けやすくなり、著しい場合は食味も落ちます。
白未熟粒の種類|白くなる場所で呼び名が変わる
白未熟粒は、粒のどこが白くなるかで呼び分けられます。
| 名称 | 白く濁る場所 |
|---|---|
| 乳白粒 | 粒の中心部 |
| 心白粒 | 芯の部分 |
| 腹白未熟粒 | 腹側 |
| 背白粒 | 背側 |
| 基部未熟粒 | 基部(付け根側) |
政府備蓄米の入札仕様書では、白未熟粒を「死米を除く成熟していない粒で、乳白粒・心白粒・基部未熟粒・腹白未熟粒・背白粒の合計」と定義し、備蓄米の条件を7.0%以下としています。
発生する時期も違います。乳白粒は登熟の初中期、背白粒と基部未熟粒は後期の蓄積異常によるものです。乳白粒は出穂前後の高温と日射不足、基部未熟粒は出穂後の高温と関係が深いとされています。
なぜ白くなるのか
白く見えるのは、デンプンが詰まりきらず粒の中に空隙ができ、そこで光が乱反射するからです。
仕組みはかなり具体的に分かっています。開花後9〜13日に昼35℃・夜30℃という条件を与えると、胚乳でデンプンを作る酵素の活性が著しく低下し、そのあと常温に戻しても回復しません。加えて、高温ではデンプンを分解する酵素(α-アミラーゼ)の発現が増えます。作る力が落ち、壊す力が増えるわけです。
さらに、夜の気温が高いと稲の呼吸が増えて消耗し、日射不足・窒素不足・水不足・倒伏があると、穂へ送られる糖が減ります。暑さだけでなく、こうした条件が重なると悪化します。
何度から危ないのか
目安となる数字があります。感受性が高いのは出穂の5〜15日後。出穂後20日間の平均で次の水準を超えると、一等米比率が著しく低下するとされています。
| 指標 | 危険水準 |
|---|---|
| 最高気温の平均 | 32℃超 |
| 平均気温 | 27〜28℃超 |
| 最低気温の平均 | 23〜24℃超 |
注目したいのは最低気温、つまり夜の暑さの影響が大きいとみられている点です。日中の最高気温だけを見ていると見誤ります。
農研機構の分析(2001〜2024年)では、高温指標が1℃上がると一等米比率がおよそ15ポイント低下するという関係が示されています。
味にはどう影響するのか
白未熟粒は、完全な粒に比べて炊飯のときに糊化が早く進み、デンプンが溶け出しやすくなります。外観が悪いだけでなく、食感の面でも劣るとされています。
胴割粒はもっと直接的で、精米すると砕けて砕米になります。秋田県農業試験場の資料では、胴割れした粒の割合が20%を超えると砕米が急増するとされています。
ただし、白未熟粒による食味低下を全国規模で定量化した公的データは見当たりませんでした。ここは「劣るとされている」という範囲での理解が正確です。
実際どれくらい起きているのか
農産物検査の機械鑑定による白未熟粒率(等級別の平均)です。
| 年産 | 全体 | 1等 | 2等 | 3等 |
|---|---|---|---|---|
| 令和4年産 | 1.9% | — | — | — |
| 令和5年産 | 5.0% | 3.4% | 6.3% | 12.2% |
| 令和6年産 | 3.0% | 2.5% | 4.4% | 7.5% |
令和5年産(2023年)の悪化がはっきり出ています。この年は東北・関東・北陸の主産地で一等米比率が大きく落ちました。
そして2025年(令和7年)は、夏の日本の平均気温が平年を2.36℃上回り、1898年の統計開始以降で最高となりました。出穂期以降の高温で白未熟粒が発生し、全国では作付面積の3〜4割、西日本では5〜6割の地域で影響が出たと報告されています。
一等米比率はこう動いた
高温の影響がいちばん分かりやすく表れるのが一等米比率です。
| 年産 | 一等米比率 |
|---|---|
| 令和元年産 | 73.2% |
| 令和2年産 | 79.8% |
| 令和3年産 | 83.1% |
| 令和4年産 | 78.6% |
| 令和5年産 | 60.9% |
| 令和6年産 | 76.3% |
| 令和7年産 | 75.6%(速報) |
令和5年産だけが際立って低いことが分かります。
県ごとの差も大きく、令和7年産では岩手96.8%・長野93.6%・山形93.3%という産地がある一方、和歌山9.8%・香川14.8%・神奈川15.8%という県もあります。主力品種の高温耐性、出穂期と猛暑が重なったかどうか、対策の実施度で差が開きます。
「日本の米の75%が1等」ではありません
一等米比率は検査を受けた米の中での割合です。農産物検査は任意で、受検率は生産量の72%(令和4年産)。検査を受けていない米は分母に入りません。等級のしくみはお米の等級とはで解説しています。
産地はどう対抗しているか
対策は大きく2つに分かれます。
暑さを避ける
- 田植えを遅らせる、晩生の品種を使う、直播にするなどして出穂の時期をずらす
- 夜間に水を入れる、かけ流し灌漑で水温・地温を下げる
- 登熟期に早く落水しない(間断かんがいで根の活力を保つ)
暑さに強くする
- 高温耐性品種に切り替える
- 乳白粒が出やすい場合は1回目の穂肥を控えめに、背白粒・基部未熟粒には2回目の穂肥で対応
高温耐性品種の作付けは広がっており、令和7年産で24.8万ha・作付の18.2%、44都府県が導入しています(前年から4.2万ha増)。きぬむすめ、こしいぶき、つや姫、にこまる、にじのきらめき、雪若丸、新之助、みずかがみ、富富富などが挙げられています。
品種による差は数字ではっきり出ます。令和7年産の茨城県の例では、整粒歩合がコシヒカリ46.1%に対し、にじのきらめき62.7%、一番星76.4%でした。栽培技術でも改善でき、筑西市の事例では深耕を5cm深くし、出穂2日前ごろに窒素を10aあたり1kg追肥することで整粒歩合が17%、収量が16%向上しています。
買う側として知っておきたいこと
等級は外観の格付けで、検査項目に食味は含まれていません。一方で、秋田県の公的マニュアルは「玄米の外観品質は食味との関係が大きく、整粒歩合が高いと搗精歩留まりが高く食味が良い」とも述べています。無関係ではない、という位置づけです。
価格差の実例として、令和7年産あきたこまち(JA米・紙袋60kg)の概算金は1等29,500円、2等28,900円、3等27,900円でした。1等と2等の差は600円です。産地や年によって差は変わります。
猛暑の年に買うなら、高温耐性品種を選ぶという手があります。味の傾向から選びたい方はお米大全、数値の読み方は食味値とはもあわせてどうぞ。
よくある質問
白未熟粒のお米は食べても大丈夫ですか?
高温障害は何度から起きますか?
一等米比率が低い年のお米は美味しくないのですか?
高温に強いお米の品種はありますか?
猛暑の年は新米を買わないほうがいいですか?
- 農林水産省 地球温暖化影響調査レポート(水稲への影響と分析)
- 農林水産省 令和7年産水稲の高温による影響(2026年3月27日)
- 農林水産省 農産物検査結果(米穀の検査結果)
- 農林水産省 機械鑑定による品位分析
- 農研機構 高温登熟障害の発生機構
- 秋田県農業試験場 高品質・良食味米安定生産マニュアル
- 茨城県 米の高温対策技術
制度や数値は改正・更新されます。最新の内容は各出典をご確認ください。








