秋になると「今年の作況指数は101」といったニュースが流れます。この数字が何を表しているのか、そして2025年産から指標そのものが変わったことをご存じでしょうか。米の統計の読み方を整理します。
① 作況指数は「その年の10aあたり収量 ÷ 平年収量 ×100」。収穫量の総量ではなく単収の比較です。
② 1993年(平成5年)の大凶作は74。戦後最悪で、タイ米の緊急輸入につながりました。
③ 2025年産から作況指数の公表は廃止され、「作況単収指数」に変わりました。令和7年産は102です。
作況指数とは何か
作況指数は、その年のお米の出来を平年と比べた数字です。計算式はこうです。
作況指数 = 10aあたり収量 ÷ 10aあたり平年収量 × 100
ポイントは、収穫量の総量ではなく単位面積あたりの収量で比べていることです。作付面積が減れば総量は減りますが、作況指数は下がりません。
分母の「平年収量」は、栽培を始める前に、気象や被害の発生を平年並みとみなし、栽培技術の進歩などを考慮して算出される、その年に予想される収量です。実質的には過去のトレンドから作られます。令和7年産の全国平年収量は539kg(1.70mmふるい目・前年産+2kg)でした。
区分の読み方
数字だけでなく、言葉でも発表されます(令和6年産までの区分)。
| 区分 | 指数 |
|---|---|
| 良 | 106以上 |
| やや良 | 105〜102 |
| 平年並み | 101〜99 |
| やや不良 | 98〜95 |
| 不良 | 94以下 |
どうやって調べているのか
全国土を200m四方(北海道は400m四方)に区切った約200万区画を母集団として、そこから約8,000の調査地点を無作為に抽出します。実際の調査は坪刈りです。田んぼの対角線上3か所で各1㎡、合計3㎡を刈り取り、脱穀・乾燥・もみすりをして3等以上に相当する粒を選別し、コンバインで刈るときのロス率を差し引いて収量を出します。
公表は段階的で、9月25日現在(10月中旬)、10月25日現在(11月中旬)、そして収穫量の確定(12月上旬)という流れでした。7月と8月の発表は指数ではなく、気象データと人工衛星データによる5段階区分です。
「ふるい目」という落とし穴
統計を読むときに知っておきたいのが、ふるい目幅の話です。収量の基準は「3等以上かつ1.70mm以上」ですが、生産者が実際に使うふるいは1.80〜1.90mmが主流です。この差にあたる米が「生産者ふるい下米」です。
同じ年でも、ふるい目を変えると収量は大きく変わります。令和6年産の全国10aあたり収量です。
| ふるい目幅 | 10aあたり収量 |
|---|---|
| 1.70mm | 540kg |
| 1.85mm | 522kg |
| 1.90mm | 508kg |
| 2.00mm | 443kg |
令和元年産までは1.70mm基準、令和2年産以降は生産者のふるい目幅基準で作況指数が算定されています。長期の系列をそのままつなげて比べることはできません。
歴史的な数値
記録に残る年の作況指数です。
| 年 | 作況指数 | 出来事 |
|---|---|---|
| 昭和42年(1967) | 112 | 記録上の最高 |
| 昭和55年(1980) | 87 | 冷害 |
| 平成5年(1993) | 74 | 戦後最悪の凶作。タイ米の緊急輸入へ |
| 平成15年(2003) | 90 | 冷夏 |
| 平成22年(2010) | 98 | 猛暑 |
近年は令和元年99、2年99、3年101、4年100、5年101、6年101と、平年並みが続いていました。
作況指数101なのに米が足りなかった年
令和5年産・6年産はいずれも作況指数101でした。それでも2024年以降に品薄と価格高騰が起きています。単収が平年並みでも、作付面積の減少や需要の増加があれば米は足りなくなります。くわしくは令和の米騒動とはをご覧ください。
2025年産から指標が変わった
大きな変更がありました。令和7年産(2025年産)から作況指数の公表が取りやめになり、新しい指標「作況単収指数」に切り替わっています。
経緯はこうです。農林水産省は2025年7月、作況指数の集計をやめ、代替指数も作らないという内容で統計委員会に申請しました。しかし委員会は2025年9月29日の答申で、代替指数を作らないことは認められないとして「作況指数に替えて新たな指数を集計・公表すること」を条件に付し、農林水産省が提案した新指数の名称が「作況単収指数」として了承されました。
| 作況指数(〜令和6年産) | 作況単収指数(令和7年産〜) | |
|---|---|---|
| 分母 | 10aあたり平年収量(トレンドから算出) | 前年産までの5か年のうち最高・最低を除く3年の平均 |
| ふるい目 | 生産者使用ふるい目幅 | 生産者使用ふるい目幅 |
変更の理由として委員会が理解したのは、2020年頃以降の気温が過去のトレンドから大きく外れ、分母である平年単収が適切でなくなったこと、そして平年単収の作成プロセスが複雑であることでした。
令和7年産の実績は、作況単収指数102、10aあたり収量526kg(生産者ふるい目・前年+7kg)、主食用の収穫量718万1,000トンでした。
「実感と合わない」と言われてきた理由
作況指数には以前から「現場の感覚と違う」という声がありました。農林水産省自身が2025年3月の審議会で分析を示しています。
- 公表値は平均値:令和6年産では、1.70mm基準で公表値以下だった調査地点が52%、1俵以上少なかった地点が29%ありました
- 比べる相手が「平年」:前年から減収した地点が53%あり、前年と比べる生産者にとっては指数が高く感じられます
- 地域差・品種差
この見直しに合わせて、生産者ふるい目での収穫量が新設され、白未熟粒や着色粒、胴割れ粒の割合も参考情報として公表されるようになりました。移行後に関係機関や生産者団体236件に聞き取ったところ、9割弱が肯定的または理解を示したとされています(ただし農林水産省自身が「事例的な結果であり統計的有意性を即断できない」と注記しています)。
今後は生産者からの収穫量データの収集を進め、令和9年産から調査対象を約8,000から約21,000に増やし、精度を2倍にする計画です。人工衛星とAIを使った実証も進んでいます。
よくある質問
作況指数100なら豊作ですか?
作況指数はもう発表されないのですか?
作況指数が高いのに米が足りないことはありますか?
1993年の米不足のときの作況指数は?
- 農林水産省 作況調査の概要
- 総務省 統計委員会 諮問第196号の答申(令和7年9月29日)
- 農林水産省 水稲収穫量調査の見直しについて
- 農林水産省 米をめぐる状況について(令和7年12月)
- 農林水産省 審議会参考資料(令和7年3月26日・作況指数の分析)
制度や数値は改正・更新されます。最新の内容は各出典をご確認ください。








