めはりずし
塩漬けの高菜で大きなおにぎりをくるんだもので、漁や山仕事の合間に手早く食べるお弁当として広まりました。高菜漬けを酢につけて丸く握ったご飯に巻き、ご飯は白米のままでもすし飯でもよいとされます。
食べる時期・場面
山仕事や漁の合間のお弁当
ご飯を握り固めた握り飯は、奈良時代の『常陸国風土記』に「握飯」の語が見えるほど古くからある食べ物です。田植えや山仕事、漁の合間に手早く食べられる携帯食として、各地で暮らしに合わせた形や包み方が生まれてきました。
地域に目を向けると、海苔の代わりに高菜や広島菜、とろろ昆布、岩のり、わかめで包むもの、炊き込みご飯や混ぜご飯を握るもの、味噌を塗って焼くものなど、そのバリエーションは多彩です。1986年には当時の食糧庁などが「ふるさとおにぎり百選」を選んでいます。
この特集では、農林水産省「うちの郷土料理」などで確認できたものを、「包む・巻く・まぶす」「混ぜる・炊き込む」「焼く」「ご当地の具」の4つに分けて地図で紹介します。
色のついた都道府県をタップすると、その土地のおにぎりが出てきます。
※ 県の色は、紹介しているもの(いちばん上)の分類です。郷土の味は地域・家庭によって違います。
塩漬けの高菜で大きなおにぎりをくるんだもので、漁や山仕事の合間に手早く食べるお弁当として広まりました。高菜漬けを酢につけて丸く握ったご飯に巻き、ご飯は白米のままでもすし飯でもよいとされます。
山仕事や漁の合間のお弁当
大和の伝統野菜「下北春まな」の塩漬けで包むめはりずしで、下北山村に限られる味です。刻んだ茎を醤油などで和えてご飯で包み、さらに葉で全体を包みます。高菜のめはりずしより辛味がなく、やや小ぶりです。
山仕事のお弁当
炒った大豆と米を塩味で炊いたごはんをおにぎりにし、茎付きのふきの葉と稲わらなどで俵の形に包みます。田植え始めの日「さびらき」に作って豊作と作業の安全を祈り、田植えの間食やお弁当にもされました。
田植え始めの「さびらき」(4月下旬〜)
富山では海苔ではなく、白と黒のとろろ昆布を巻くおにぎりが定番です。北前船の寄港地として北海道産の昆布が多く入ってきたことが背景にあります。時間がたってもふんわりした柔らかさが保てる点も好まれています。
弁当・祭り・運動会・遠足など人が集まる時
丸く大きく握ったおにぎりを、片面に醤油を塗った隠岐の岩のりですっぽり覆ったもので、見た目から「ばくだん」と呼ばれます。具を入れないシンプルなものが多く、子どものおやつや弁当として日常的に食べられています。
通年(おやつ・弁当)
具を入れたおにぎりに、3〜4cmほどに切った広島菜漬けを巻いたものです。広島菜は長野の野沢菜、九州の高菜とともに日本三大漬菜と呼ばれ、歯切れのよさとほのかな辛味が特徴です。お弁当にもよく入ります。
通年
丸く握ったおむすびに梅干しや塩吹き昆布などを入れ、きなこをまぶしたものです。田植えの合間や、田植えを終える「代みて」の際に振る舞われました。苗が秋に丸々と実るよう、丸く握ったといわれています。
田植えの時期(5月末〜6月初め)
春に海岸で干した萩のわかめを刻み、おむすびの全面にまぶしたものです。昔は近所と共同で農作業をする日の昼食やお茶の時間に出されました。シソや夏みかんの皮を混ぜた刻みわかめの商品も売られています。
農作業の昼食や3時のお茶
大豆などを炊き込んだ塩味の豆ごはんをふきの葉で米俵の形に包み、茎で留めたものです。伊賀地域では田植えの初めに13個を田の神に供えて豊作を祈ります。手を汚さずに食べられ、田植えの間食にもされました。
田植えの時期
エビの天ぷらを具にしたおにぎりです。1950年代に三重県津市の天ぷら店で賄いとして考案されたのが始まりとされ、その後名古屋に広まり、名古屋めしの一つとして知られるようになりました。
砂糖入りのきな粉を混ぜたご飯を軽く握り、2枚の朴葉で包んで重しをかけ、葉の香りを移したものです。田植え後の祝い「さつきあげ」のごちそうや作業の合間の補給食とされ、ふるさとおにぎり百選にも選ばれています。
田植えの時期(5月上旬〜下旬)
丹波黒大豆を炊き込んだ黒豆ごはんは、6月の「さびらき」で、おにぎりのように丸めて朴葉に包み、神棚や田んぼに供えられました。この習わしは失われつつありますが、黒豆ごはんは今も田植えや祝い事に炊かれます。
6月の「さびらき」、田植えや祝い事
醤油で味付けしたカツオ節を芯にして、すし飯ではなく普通のご飯を海苔で太く巻いたものです。おかかおにぎりを細長くして片手で食べやすくしたような料理で、海苔の産地・富津の漁師の弁当として親しまれてきました。
通年(漁師の弁当)
豚バラ肉と油揚げを甘辛く煮てご飯に混ぜたおにぎりです。秋祭り「やわたんまち」で神輿の担ぎ手に振る舞われ、片手で食べられるようおにぎりにしたのが始まりで、今もおにぎりの形で食べられることが多い料理です。
秋祭り「やわたんまち」、通年
焼いたポークランチョンミートと薄焼き卵を、ご飯と海苔でU字に折りたたむように挟んだおにぎりです。戦後に定着した「ポーク」と卵料理の組み合わせから生まれたとされ、スーパーや食堂でも広く売られています。
豚の三枚肉などを加えて炊く沖縄の炊き込みご飯で、豚の脂でつやよく仕上がるのが特徴です。もとは行事や祝い事に欠かせないハレの料理で、今は家庭料理としても親しまれ、おにぎりにしてお弁当にすることもあります。
行事・祝い(旧盆のウンケーなど)
炒ってすった黒ごまを使う真っ黒な醤油味の色ご飯で、もち米で作ります。仏事に供えるほか、砂糖で甘くして祭りや田植えに赤飯代わりに作る地域もあり、昔はおにぎりにして田んぼへ持って行き、作業の合間に食べました。
仏事・祭事・田植え
鶏肉(かしわ)や具材を煮詰めたものを炊いたご飯に混ぜる、福岡の定番の家庭料理です。祭りや運動会などの行事にも作られ、駅弁としても古くから知られます。冷めてもおいしく、おにぎりでも食べられています。
祭り・運動会などの行事、通年
鶏肉と季節の野菜を炊き込んだ農家飯で、稲刈りや畑仕事の合間に家族が握ったおむすびを食べる光景が見られました。冷凍のとりめしおにぎりが空港やサービスエリア、通信販売でも扱われ、宮崎を代表する味の一つです。
稲刈りや畑仕事の合間、祭りやイベント
米に1〜2割の粗挽きとうきびを混ぜ、塩を入れて炊くご飯で、かつては麦飯と並ぶ主食でした。冷えるとおいしくないため昼と夜の分は熱いうちににぎり飯にし、囲炉裏で焼いて食べました。ふるさとおにぎり百選の一つです。
日常の主食
阿蘇高菜の古漬けを細かく刻んで油で炒め、唐辛子を加えてご飯に混ぜる郷土料理です。県内の学校給食でも定番のメニューになっています。阿蘇高菜漬けはおにぎりやチャーハンなどにも幅広く使われています。
通年
もち米に栗と小豆を入れたおこわで、「栗こわい」「こわい」とも呼ばれます。神前に供えるときは円錐や三角のおにぎりの形にして「ごっくうさん」と呼ぶこともあり、秋祭り「くんち」や家のお祝いに欠かせません。
秋祭り(くんち)や祝い事
もち米にしいたけやごぼう、栗、ちくわなどを入れて醤油味で炊き込むおこわです。僧兵の炊き出しが始まりといわれ、牛馬市の食事や大山詣りの弁当にもされました。1986年に「ふるさとおにぎり百選」に選ばれています。
氏神さまの例祭や祭事
具材を甘辛く煮て混ぜた五目飯を、丸や扇などの型で押し抜いたごはんで、「もっそう」は握ったごはんを指します。百々手祭りの会食や、地域総出の共同作業のまかないとして振る舞われました。
百々手祭り、地域の共同作業
くちなしの実で黄色く染めたもち米の強飯で、戦国時代から旧東海道の茶屋で売られた携帯食です。もとは小判形に干したものでしたが、約60年前に地元の弁当業者がすぐ食べられるおにぎりにアレンジして復活させました。
祭りや祝い事、通年
すし飯に焼いてほぐしたアジと甘く煮たうずら豆を混ぜ、俵形に握ったすしです。農繁期前の行事「地獄入り」で、庄屋(お方)が小作人に振る舞ったのが始まりとされます。家庭で作る機会は減り、産直市などで売られることがあります。
初夏(農繁期前)
おにぎりにしょうが味噌や甘味噌を塗って焼いたもので、上杉謙信が冷めたおむすびを剣先に刺して焼いたのが名の由来といわれます。正月や酒宴の後の夜食とされ、だしやお茶をかけて茶漬けにもします。
正月・年始の酒宴の後の夜食、新米の収穫祝い
味噌を塗った丸いおにぎりに山形青菜の漬物「青菜漬」を巻き、焼き網で軽く焦げ目がつく程度に焼いた庄内地域の郷土料理です。青菜漬は独特の辛味とシャキッとした歯ざわりが特徴の、山形を代表する漬物です。
ご飯をすりつぶして卵くらいの大きさに丸め、串に刺して焼き、えごま(じゅうねん)の味噌を塗ってさらに焼いたものです。正月に餅を食べられなかった若者が考えたという話が名の由来とされ、新米の収穫祝いに多く作られます。
新米の収穫祝い、通年
つぶした米を串に巻きつけ、たれをつけて焼いたものです。木こりが木の切れ端に飯を握りつけて焼き、味噌をつけて食べたのが始まりとされます。形はわらじ形や団子形などさまざまで、中山道を境に北は醤油味、南は味噌味が多いそうです。
秋の収穫後、祭事、行楽地
名前をタップすると、地図で詳しく見られます。
記録に残る最も古い例は、奈良時代初めに成立した『常陸国風土記』に見える「握飯(にぎりいい)」とされます。考古資料では、石川県中能登町の杉谷チャノバタケ遺跡(弥生時代)から、握り飯と考えられる炭化した米の塊が見つかっています。
平安時代には、蒸したもち米を大きな楕円形に固めた「屯食(とんじき)」があり、これが現在の握り飯の直接の起源と考えられています。うるち米が使われるようになったのは鎌倉時代末期頃からで、四角い板海苔を巻く形は、海苔の養殖と板海苔の販売が広まった江戸時代以降とみられています。
握り飯は戦や山仕事、田植えの携帯食としても重宝されました。新潟のけんさん焼きには上杉謙信が冷めたおむすびを剣先に刺して焼いたという由来が伝わり、各地の郷土のおにぎりには田植えや祭りと結びついたものが多く見られます。1986年には当時の食糧庁などが「ふるさとおにぎり百選」を選定しました。
江戸時代後期の『守貞謾稿』には、京都・大坂では俵形に、江戸では円形や三角などに握ると記されており、かつては上方の俵形、江戸の円形・三角という違いがあったことがうかがえます。俵形は弁当箱に収まりやすく、幕の内弁当にも使われてきました。
東北地方で見られる平たい円形は、味噌を塗って網で焼くことが多かったため、転がらない形になったという説があります。郷土料理にも形へのこだわりがあり、広島のきなこむすびは苗が丸々と実るよう丸く握り、三重や奈良のふき俵は米俵の形に、佐賀の栗おこわは神前で円錐や三角の形にします。
全国を見渡すと、おにぎりを包むものは海苔に限りません。和歌山・三重の熊野地方では高菜漬け、広島では広島菜漬け、富山ではとろろ昆布、隠岐では岩のり、萩ではわかめを使います。福井のほうばめしや三重・奈良のふき俵のように、植物の葉で包んで香りを移すものもあります。
まぶす素材も多彩で、広島のきなこむすびはきなこ、山口のわかめむすびは刻みわかめを全体にまとわせます。具材にも地域色があり、野沢菜漬や佃煮、梅漬けなど、その土地の保存食がおにぎりの具として使われてきました。
日本で主食として食べられているジャポニカ米は、冷めてもでん粉が硬くなりにくく、味も落ちにくいため、おにぎりに向いているとされます。うるち米は粘りのもとになるアミロペクチンとアミロースの両方を含み、アミロースの割合が低いお米ほどもっちりと柔らかくなる傾向があります。市販のおにぎりには、冷めてもおいしい性質の低アミロース米が使われることもあります。
家庭で作るなら、普段食べているうるち米で十分です。冷めてから食べることが多いなら、粘りがあって冷めても硬くなりにくいお米を選ぶのが一つの目安です。炊き込みご飯や混ぜご飯のように味の付いたご飯は、具を中に包まずそのまま握るのが一般的です。おこわ系のおにぎり(大山おこわ、栗おこわ、染飯など)はもち米を使います。
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