石狩鍋
サケのぶつ切りやあらを、キャベツや大根、豆腐などと昆布だしで煮て味噌で味をととのえる鍋です。石狩川河口の漁師が大漁祝いに食べたのが始まりとされ、仕上げに山椒を振るのが特徴です。
食べる時期・場面
冬
日本各地には、その土地でとれる魚や野菜、肉を使った郷土鍋が伝わっています。この特集では、農林水産省「うちの郷土料理」をはじめとする公的な資料などで確認できた鍋を、都道府県ごとに地図にまとめました。味噌仕立て、醤油・だし仕立て、塩・水炊き系の3つに分けて色分けしています。
鍋のあとに残った汁にごはんを入れて雑炊にしたり、うどんやちゃんぽん麺を入れたりする食べ方は「シメ」と呼ばれます。ただし、シメの習慣は地域や家庭、お店によってさまざまです。各カードでは、出典にシメの記述があったものだけその食べ方を紹介し、記述がないものは鍋そのものの紹介にとどめています。
色のついた都道府県をタップすると、その土地の郷土の鍋が出てきます。
※ 県の色は、紹介しているもの(いちばん上)の分類です。郷土の味は地域・家庭によって違います。
サケのぶつ切りやあらを、キャベツや大根、豆腐などと昆布だしで煮て味噌で味をととのえる鍋です。石狩川河口の漁師が大漁祝いに食べたのが始まりとされ、仕上げに山椒を振るのが特徴です。
冬
鶏だしの醤油味の鍋に野菜や糸こんにゃくを入れ、汁用の南部せんべいを割り入れて煮込む八戸の料理です。せんべいは煮崩れしにくく、もちもちした食感になります。現在は飲食店でも広く提供されています。
寒い時期
タラの頭や骨、内臓などのアラを、大根やねぎと大きな鍋で煮込む津軽の冬の料理です。仕上げに肝を溶かし入れてコクを加えます。「じゃっぱ」は捨てる部分を意味する方言で、正月料理の一つでもあります。
冬・正月
小麦粉の生地を薄くのばして手でちぎり、鶏肉やごぼう、きのこなどを煮た出汁に入れて煮込む料理です。「ひっつまむ(手でちぎる)」が名前の由来とされ、味付けは醤油が多いものの地域や家庭で異なります。
通年(特に冬)
耳たぶほどのかたさに練った小麦粉を薄くのばし、季節の野菜や肉を入れた出汁で煮て醤油などで味付けする料理です。行事の際には大鍋でつくってふるまわれ、出汁や具材は家庭ごとに受け継がれています。
通年
ご飯をつぶして串に付けて焼いた「たんぽ」を切り、比内地鶏などの鶏ガラだしでごぼうや長ネギ、セリと煮る鍋です。醤油で味付けし、新米の収穫後に労をねぎらって囲む風習があります。
新米の時期(秋〜冬)
少しかために炊いたご飯をすりこぎで半分ほどつき、丸めた「だまこ」を鶏だしで地鶏やネギ、セリ、マイタケと煮る鍋です。きりたんぽと違い串を使わず、基本は焼かないのが特徴です。
収穫期・冬
里芋と牛肉、こんにゃく、ねぎを煮る鍋で、内陸部は牛肉の醤油味、庄内地域は豚肉の味噌味が定番です。秋には河原で鍋を囲む芋煮会が開かれます。近年は具が少なくなった鍋にうどんを入れるシメも定着しています。
秋〜冬
寒の時期にとれるマダラを頭から尾、内臓まですべて鍋に入れて煮込む庄内の冬の料理です。肝を味噌ベースの汁に溶いてコクを出し、本来はねぎを入れず岩のりを添えます。寒鱈まつりでもふるまわれます。
1月中旬〜2月
エゾイソアイナメ(どんこ)を身と肝ごと使い、大根やにんじん、白菜と鍋で煮込んで味噌で味付けする相馬市の料理です。秋から冬の肝の入ったどんこが旬とされ、どんこまつりでもふるまわれています。
秋〜冬
あんこうの身や皮、肝、エラ、ヒレまで使い、野菜と煮込む茨城の冬の鍋です。漁師の船上料理「どぶ汁」がもとで、味噌仕立てのほか醤油仕立ての店もあります。県の観光サイトでは、シメの雑炊を出す店も紹介されています。
11月〜3月頃
小麦粉でつくった塩を使わない幅広麺を、にんじんや長ねぎ、大根などの野菜と大鍋に入れ、ゆでずにそのまま煮込む群馬の麺料理です。味付けは家庭ごとに異なり、県の無形民俗文化財にも採択されています。
通年
季節の野菜を油で炒めてから煮た汁に、平たく太いうどんをゆでずに入れて醤油ベースで仕上げる料理です。深谷では名産の深谷ねぎをたっぷり使います。かつては囲炉裏端で鍋を囲み、夕食に食べられていました。
秋〜冬
鶏肉とささがきごぼうを鍋で煮て味噌で味をつけ、最後にかために炊いたご飯を入れてひと煮立ちさせる市原市の郷土料理です。骨をたたいて混ぜた鶏団子を使うこともあり、正月や祭りなど人が集まる場で食べられてきました。
正月・冠婚葬祭・冬
まぐろとねぎを醤油と酒で煮る江戸発祥の小鍋です。当時は傷みやすい脂身を食べる工夫として生まれたといわれます。まぐろは色が変わる程度にさっと煮るのがよく、だしの出た汁も味わえます。
力士の体づくりのために相撲部屋で食べられてきた鍋です。だし汁や鶏ガラスープで鶏肉、白菜、人参、ねぎ、油揚げ、豆腐などを煮込み、味付けは醤油や味噌などさまざまです。都内には元力士が営む店もあります。
通年
味噌や醤油を使ったたれで牛肉や長ねぎ、豆腐、春菊などを最初から煮る横浜発祥の鍋で、煮えた具は溶き卵につけて食べます。1862年に初の牛鍋屋が開業したとされ、明治創業の老舗が今も営業しています。
通年
スケソウダラを一匹まるごとぶつ切りにし、身や肝、白子などとごぼうを味噌で煮込む朝日町発祥の料理です。漁師の女房たちが浜で大鍋を沸かしたのが始まりで、国道8号沿いは「たら汁街道」と呼ばれています。
通年(12〜2月頃が人気)
昆布だしに酒と塩で味をととのえた鍋で、薄くそぎ切りにした寒ブリや水菜、ねぎ、きのこをくぐらせ、ポン酢やごまだれで食べます。漁獲シーズンの10月から2月にかけて県内の飲食店に登場する冬のごちそうです。
10月〜2月
イカの内臓やイワシなどを塩漬けにして熟成させた能登の魚醤「いしる」を使い、旬の魚介や野菜を出汁とともに煮る鍋です。昆布出汁と合わせる食べ方もあり、ホタテの貝殻を鍋代わりにする貝焼きも知られています。
冬
イワシをぬか漬けにしたコンカイワシを、大根や白菜、きのこなどと酒粕の入った出汁で煮込む能登の鍋です。ぬかと酒粕の香りが特徴で、名前は「今日も食べっか」という会話に由来するといわれています。
冬
塩を入れずに打った幅広の「ほうとうめん」を、かぼちゃやじゃがいも、白菜などたっぷりの具と煮干しだしの味噌仕立てで煮込む山梨の代表的な郷土料理です。打ち粉ごと煮るため汁にとろみがつきます。
通年(冬に増える)
いのししと豚を掛け合わせた「いのぶた」の肉を、ごま味噌仕立ての汁で地元の野菜やきのことたっぷり煮込む鍋です。狩猟が盛んだった笛吹川上流の三富地域に伝わり、食堂や道の駅などで味わえます。
通年
生の桜エビと大きめに切った豆腐を、醤油・砂糖・酒のすき焼き風の味付けで煮込み、仕上げに葉ねぎを加える鍋です。漁から戻った桜エビ漁の漁師が酒の肴にした漁師めしで、今も家庭で受け継がれています。
通年(漁期は春・秋)
とり肉と野菜を鍋で焼き、砂糖と醤油(伝統的にはたまり)で煮て溶き卵につけて食べる、鶏のすき焼きです。大晦日に食べることが多い料理で、シメにはうどんやごはんを入れることが多いとされています。
大晦日・冬
八丁味噌仕立ての汁で、塩を使わないコシの強いうどんを土鍋で煮込む料理です。油揚げやとり肉、ねぎを入れ、卵を割り入れて仕上げます。うどんを食べ終えたあとに、ごはんを入れておじやにすることもあります。
通年
熊野灘でとれたサンマやサバなど背の青い魚と季節の野菜、豆腐を醤油仕立てのすき焼き風に煮る漁村の鍋です。人数が増えても皆で分け合える料理として生まれ、溶き卵につけて食べる家庭もあります。
冬場に多い
牛肉や鶏肉、琵琶湖の湖魚をすき焼き風に味付けして煮る滋賀の鍋料理です。名前は具材を煮るときの音に由来するといわれます。盆や正月の客寄せには牛肉や鶏肉を使うことが多く、湖辺の地域では湖魚でもつくられてきました。
通年(盆・正月の客寄せに多い)
鴨肉をねぎや豆腐などと煮込む鍋料理です。豊臣秀吉が長浜城主だったころ琵琶湖の鴨を好んだと伝わり、長浜には天保年間創業の鴨鍋の老舗が残ります。締めは雑炊やうどんのほか、蕎麦を入れる例もよく見られます。
昆布を敷いた鍋に豆腐と水を入れて温め、醤油やポン酢のつけダレと薬味で味わう鍋料理です。発祥は京都・南禅寺周辺とされ、今では全国で親しまれています。主に冬に食べられ、俳句では冬の季語にもなっています。
主に冬
かつお節などのだしに醤油を加えた鍋に、水菜をたっぷりと鯨肉を入れて炊く大阪の郷土料理です。水菜を噛むとハリハリと音がすることが名前の由来とされます。鯨肉が手に入りにくい今は、豚肉などで代用されることも増えています。
冬(寒い時季)
ハモの頭や骨と昆布でとった出汁に酒やみりん、醤油を加え、骨切りしたハモを煮る鍋です。玉ねぎとじゃがいもを入れるのが泉州流で、玉ねぎ栽培発祥の地とされる泉州ならではの組み合わせです。旬は6〜8月と10〜11月です。
6〜8月、10〜11月
白みそと赤みその合わせみそのだし汁で、猪肉と季節の野菜を煮る丹波篠山の鍋料理です。明治末ごろに猪肉をみそ仕立てで食べたのが始まりとされ、猪肉を牡丹の花のように盛り付けるのが名前の由来といわれます。粉山椒を振って味わいます。
主に冬、正月や来客時
ハモと淡路島産タマネギを、寄せ鍋風のだしで煮る淡路島の名物鍋です。旬は初夏から秋で、夏の風物詩とされます。紹介されているレシピでは、鍋の中身を食べ終えたあと、かためにゆでたそうめんを入れてだし汁と一緒に味わいます。
初夏から秋
鶏肉と野菜を牛乳とだし汁で煮込む奈良の郷土料理です。飛鳥時代に伝わった乳製品と鶏肉を合わせたのが起源とされ、今の形は昭和初期に明日香の名物として考案されました。具材から出汁が出るので、締めにうどんなどを入れるのもおすすめとされています。
通年(特に冬)
関西で「かしわ」と呼ぶ鶏肉を使った奈良のすき焼きです。天満宮の秋祭りの祝いの席で食べられてきたといわれ、県のブランド鶏「大和肉鶏」が使われます。溶き卵につけて食べることが多く、最後に三輪素麺を入れるのもおすすめとされています。
通年(祝い事やもてなしの席)
島根県に伝わる鴨鍋の一種で、すき焼き風の味付けで鴨肉やセリなどを煮ます。鍋にアワビの貝殻を用いるのが特徴で、「貝焼き」と呼ばれています。鴨肉をねぎや豆腐と煮込む鴨鍋の、地域色ある食べ方のひとつです。
イノシシやシカが多く獲れる岡山県北部・美作地域の冬の郷土料理です。昆布やカツオ節のだしを味噌、砂糖、みりん、酒で調え、イノシシ肉と白菜などの野菜、きのこを煮ます。家庭のほか、ジビエ料理として飲食店でも多く提供されています。
冬
そば粉を練って、どじょうのような細長い形にして煮る山間地の鍋料理です。川魚をだし汁に使い、ごぼうや油揚げ、白菜などと煮て醤油やみりんで味を調えます。寒さが厳しい美作の山あいで、主に冬に食べられてきました。
主に冬
白みそと赤みそを合わせた味噌を土鍋のふちに土手のように塗り、かきと野菜、豆腐を煮る広島の冬の郷土料理です。ふちの味噌を崩しながら好みの味に調えて食べるのが特徴です。かきの旬を迎える1〜2月に、家庭や飲食店で楽しまれています。
冬(かきの旬は1〜2月)
鶏肉、砂ずり、豚肉と野菜を、塩、こしょう、日本酒のシンプルな味付けで食べる鍋料理です。酒どころ西条の杜氏が、利き酒に響かないよう考えたまかないが発祥といわれます。鍋の中身を食べ終えたら、もう一度最初からつくり直すのが食べ方とされます。
通年(10月の酒まつりでも振る舞われる)
昆布だしでフグの切り身や骨を野菜と煮込み、ポン酢で食べる鍋です。下関ではフグを「ふく」と呼ぶことが多く、「下関ふく」はGIに登録されています。食べ終えた鍋の残りを塩で調え、ご飯を入れて煮立たせるとふぐ雑炊になります。
秋の彼岸から春の彼岸(冬が旬)
甘辛い味噌だれに漬け込んだ牛のホルモンを、キャベツやモヤシ、ネギと平たい鍋に山盛りにして蒸し煮にする下関のホルモン鍋です。だしを使わず、野菜の水分だけで煮るのが特徴で、博多のもつ鍋とはまったく異なる料理とされます。
鶏肉、里芋、生揚げ、しいたけなどを煮込む愛媛の鍋料理で、発祥は大洲市とされます。お籠りで各自が里芋を持ち寄ったのが始まりといわれ、秋には河川敷で月見を兼ねて鍋を囲む「いもたき」が県内各地で催され、中秋の風物詩になっています。
秋(中秋)
骨ごと煮込んだ鶏のスープで季節の野菜を煮て、ポン酢で食べる福岡を代表する鍋料理です。博多祇園山笠の直会では必ず食べられるといわれます。紹介されているレシピでは、最後に餅やうどん、またはご飯と卵とねぎを入れて雑炊にします。
通年
牛や豚のもつを、大量のニラやキャベツ、ニンニクと醤油や味噌味のだしで煮込む鍋で、福岡では郷土料理として定着しています。もつと野菜を食べたあとは残った汁にうどんを入れていましたが、1990年頃からはちゃんぽん麺で締める店も多くなりました。
対馬に古くから伝わる寄せ鍋で、地鶏か、寒ブリなど近海の魚を野菜や豆腐と煮ます。醤油に砂糖やみりんも加え、少し甘めに仕上げます。具を食べ終えたスープにソーメンか特産の対州そばを入れるのが地元流で、「いりやきは後食え」という格言もあります。
通年(祝い事や法事のもてなし)
五島うどんの乾麺を鉄鍋でぐつぐつとゆで、鍋から直接すくって、トビウオのアゴだしにつけて食べる地元の定番の食べ方です。大勢で鍋を囲む行事食としても親しまれてきました。ネギやかつお節、醤油を入れた溶き卵に絡めて食べることもあります。
名前をタップすると、地図で詳しく見られます。
国語辞典では、雑炊とおじやはほぼ同じ料理として扱われています。デジタル大辞泉は雑炊の同義語として「おじや」を挙げ、精選版日本国語大辞典は、おじやを「雑炊をいう女性語」と説明しています。日本大百科全書でも、おじやは女房詞(宮中の女性が使ったことば)とされています。
雑炊は、古くは多めの水を加えて炊くことから「増水」とも書かれました。一方で、料理の解説などでは「ご飯を水で洗ってさらりと仕上げるのが雑炊、洗わずにとろりと仕上げるのがおじや」と使い分ける説明も見られます。これは辞書上の定義ではなく、仕上がりの違いを表す目安と考えるとよいでしょう。
ここでは家庭で一般的に行われている手順を紹介します。鍋の具を食べ終えたら、残った骨や具の切れ端を取り除き、浮いたアクや余分な脂をすくいます。汁の量が少なければ水やだしを足し、味をみてから塩や醤油で調えます。
ご飯はさらりと仕上げたいなら、ざるに入れて水でさっと洗い、表面のぬめりを落としてから加えます。とろりとした口あたりが好みなら洗わずに入れます。ご飯を入れたら煮すぎず、汁を含んだところで溶き卵を回し入れ、火を止めてふたをして少し蒸らすと、卵がやわらかく仕上がります。
雑炊は、汁を吸ってもご飯の粒が崩れすぎないことが仕上がりを左右します。雑炊用にご飯を炊くときは、標準よりやや控えめの水加減で少し硬めに炊いておくと、汁の中でも粒が残りやすくなります。冷やご飯を使う場合も、ほぐしてから入れるとだまになりにくくなります。
品種で選ぶなら、粘りが控えめな米を使うのも一つの方法です。宮城県の資料では、ササニシキは粘りが少なく、寿司酢がシャリにしみ込みやすい米として紹介されています。だしをしっかり含ませたい雑炊でも、こうしたあっさりした食感の米を試してみる価値があります。
なお、米穀安定供給確保支援機構の資料では、普通の精白米の水加減は洗う前の米の容量の1.2倍、新米は1.1倍が標準とされ、30分以上(冬は50〜60分)の浸水がすすめられています。硬めに炊く場合は、この標準から少し水を減らして調整します。
このマップに載せた鍋のうち、出典でシメの食べ方まで確認できたものを挙げます。ご飯で雑炊にする鍋のほか、うどんやそうめん、ちゃんぽん麺で締める鍋もあり、土地ごとの違いが見えてきます。
楽天市場の検索結果にリンクしています(広告)。
内容は上記の資料をもとに編集部がまとめたものです。商品の価格・在庫は楽天市場の商品ページでご確認ください。誤りのご指摘はお問い合わせから。