札幌の雑煮(鶏ガラだし)
明治以降に全国から人が移り住んだ北海道では、雑煮も多種多様です。札幌では鶏ガラベースのすまし汁に焼いた角餅を入れ、鶏もも肉や大根、人参、ごぼうの千切りを具にします。砂糖が入って少し甘いのが特徴です。
食べる時期・場面
正月
お雑煮は、餅を主な具にした汁物で、正月を祝う料理として全国で食べられています。餅の形や焼くか煮るか、だしの素材や汁の味付け、入れる具は地域によって大きく異なり、よく知られたものだけでも100種類を超えるといわれます。
大きな傾向としては、東日本は角餅を焼いてすまし汁に、西日本は丸餅を煮て使うことが多く、京都・大阪・奈良・香川などは白味噌仕立て、山陰には小豆汁の雑煮があります。ただし同じ県の中でも地域や家庭によって違いがあり、北海道のように移住者がふるさとの雑煮を持ち込んだ地域もあります。
この特集では、農林水産省「うちの郷土料理」や農林水産省の広報誌、百科事典で確認できた内容をもとに、汁の種類で「すまし汁」「白味噌」「味噌(白味噌以外)」「小豆汁・その他」に分けて地図で紹介します。
色のついた都道府県をタップすると、その土地のお雑煮が出てきます。
※ 県の色は、紹介しているもの(いちばん上)の分類です。郷土の味は地域・家庭によって違います。
明治以降に全国から人が移り住んだ北海道では、雑煮も多種多様です。札幌では鶏ガラベースのすまし汁に焼いた角餅を入れ、鶏もも肉や大根、人参、ごぼうの千切りを具にします。砂糖が入って少し甘いのが特徴です。
正月
百科事典では、青森は焼いた角餅のすまし汁とされ、津軽地方では郷土料理のけの汁に焼いた角餅を入れる津軽雑煮が紹介されています。年取りや正月に食べるくじら汁にも、焼いた角餅を入れて雑煮にすることがあります。
年取り・正月
根菜や焼き豆腐などを入れた醤油味の汁に焼いた角餅を入れ、餅は汁ごと食べるほか、別皿の甘いくるみだれにつけて二通りの味を楽しみます。冷害で米が育ちにくい沿岸部で、貴重な餅を大切に味わう食べ方と考えられています。
元日の朝、祝いやもてなし
松島湾でとれたハゼを焼いて干した焼きハゼで出汁をとり、凍らせた大根・人参・ごぼうの「おひきな」やずいきを入れ、椀からはみ出す焼きハゼとハラコ(イクラ)、仙台せりをのせます。江戸時代末期から食べられています。
正月三が日
東日本は角餅が主流ですが、山形県庄内地方は北前船が運んだ京都文化の影響が強く、丸餅が主流とされます。百科事典では、庄内の雑煮は丸餅を煮るすまし仕立てで、村山地方では角餅や水餅を入れると紹介されています。
正月
房州産の海藻「はばのり」を干したものを、焼いたりゆでたりした餅の上に青のり、カツオ節と混ぜてたっぷりかけます。「一年中幅を利かせられる」と縁起がよいとされ、九十九里地域や市原市の正月料理になっています。
正月
焼いた餅に、火を通した鶏肉や青菜、しいたけ、かまぼこを添え、昆布とかつお節のすまし汁を注ぎ、ゆずとみつばを添えます。当初は味噌仕立てでしたが、元禄年間に野田・銚子の醤油が広まり、濃口醤油のすまし汁になったとされます。
正月
東部の海沿いではフクラギ(ブリの若魚)やカワハギなどの魚介と野菜で餅が隠れるほど具だくさん、西部の砺波地方では根付きの長ネギなどでシンプルに作ります。どちらにも富山特産の昆布巻きかまぼこや紅白の赤巻きが入ります。
正月
石川は角餅と丸餅の両方が使われる地域です。百科事典では、能登は丸餅のすまし汁が主流で小豆汁の雑煮もあり、加賀地域や羽咋市では角餅のすまし汁が主流、加賀市には細ネギを切らずに入れるねぎ雑煮があると紹介されています。
正月
板昆布を敷いた鍋で丸餅を煮て味噌で味付けし、カツオ節をたっぷりかけるシンプルな雑煮です。具はかぶなどを入れることもありますが、具なしも多いそうです。嶺南地方には、北前船にちなむとされる黒砂糖をのせる地域もあります。
正月三が日
醤油風味のすまし汁に、焼かない角餅と尾張の伝統野菜・餅菜(正月菜)を入れ、鶏肉や花ガツオを添えるのが一般的です。名古屋では餅と餅菜だけで作り、「名(菜)を持ち(餅)上げる」という縁起担ぎの説も伝わります。
正月三が日
東西の文化が混ざる三重では、角餅・丸餅・押し餅が地域ごとに使われ、湯で炊く、水から炊く、焼くなど餅の扱いもさまざまです。汁はすまし汁の地域と味噌汁の地域があり、粟餅と白餅を入れる金銀餅もあります。
正月
丸餅に頭芋(里芋の親芋)と大根、金時人参などを入れた白味噌仕立ての雑煮です。丸餅は円満と長寿、頭芋は子孫繁栄や立身出世の願いを表します。餅は焼くこともありますが、白味噌の風味を生かすためゆで餅にすることも多いそうです。
正月三が日
白味噌汁に丸餅と、輪切りの大根や人参、里芋を入れます。丸い食材は「角が立たず円満に」という縁起担ぎです。元旦は白味噌、二日目は醤油のすまし汁に変えるのは「商い(飽きない)」の街ならではの風習といわれます。
正月(元旦は白味噌、二日目はすまし)
丸餅、豆腐、祝だいこん、金時人参、里芋などを入れた白味噌仕立ての雑煮で、餅を取り出して砂糖入りのきな粉につけて食べる地域が多くあります。百科事典では、関西で丸餅を焼いて入れるのは奈良独特と紹介されています。
正月
和歌山は角餅・丸餅の両方が使われる地域です。百科事典では白味噌仕立てに焼かない丸餅が主流で、すさみ町では鮎の干物の出汁に焼いた切り餅を入れるとされます。田辺市には正月に餅の代わりに里芋の親芋「ぼうり」を食べる風習が残ります。
正月
小豆の煮汁に柔らかく煮た丸餅を入れる雑煮で、鳥取の主流です。今は砂糖で甘くしたものが一般的ですが、塩味もあります。三朝町では栃の実の餅を入れます。小豆の赤には邪気を払う力があるとされ、元旦の朝におせちと食べます。
元旦の朝
甘さ控えめに煮た小豆に丸餅を入れる、さらさらとした雑煮です。元旦は岩のりのすまし雑煮、2日からは小豆雑煮という地域もあります。出雲の神在祭で振る舞われた「神在(じんざい)餅」が「ぜんざい」の語源という説もあります。
正月2日から
醤油仕立てのすまし汁に、焼かずにゆでた丸餅を入れる雑煮です。出雲では十六島(うっぷるい)の岩のりとカツオ節をのせ、西部では豆腐やこんにゃく、黒豆を使うものもあります。出汁はアゴ、いりこ、ハゼなど地域や家庭で異なります。
元旦
海に近い岡山県南部では、出世魚で縁起のよいブリを入れるのが定番です。醤油などで味を調えた汁で根菜とブリを煮て、別鍋で柔らかく煮た餅とほうれん草、百合根を合わせます。北部ではだしをスルメでとるのも特徴です。
正月
煮干し・昆布・かつおだしのすまし汁に根菜を煮て丸もちを柔らかく煮込み、かきやぶりを入れる雑煮です。かきは「福をかき寄せる」縁起物とされます。味噌仕立てや、はまぐり、焼きあなごを入れるなど地域や家庭で違いがあります。
正月
丸餅とカブ、三ツ葉を具にした、醤油のすまし汁仕立てのシンプルな雑煮です。餅を焼かずに入れるため、汁に少しとろみがつくのが特徴です。細切りのするめを結んで入れると香りや見た目がよくなるとされます。
正月
煮干しと昆布のだしで大根や人参、里芋を煮て、しいたけやかまぼこを加え、白味噌を溶き入れて青菜を添えます。餅は焼く家庭もゆでる家庭もあります。勝浦では黒砂糖、相生地区では砂糖を入れて食べる家庭もあるそうです。
正月
米が育ちにくかった祖谷地方の雑煮で、餅の代わりに大きくて硬い岩豆腐を使います。いりこだしの醤油味のつゆに煮しめた里芋を入れ、岩豆腐2枚を重ねてのせます。その様子が刀を「打ち違え」る姿に似ていることが名の由来です。
正月
白味噌仕立ての汁に、甘いあん入りの丸餅と輪切りの大根、金時人参などを入れる雑煮です。讃岐の白砂糖は「讃岐三白」の一つとされ、明治時代あたりから年に一度の特別な料理として雑煮に取り入れられたといわれます。
正月
西日本ながら角餅が主流の地域です。藩主の山内氏が長く江戸に留まったことが理由として挙げられています。百科事典では、鰹だしのすまし汁に煮た角餅を入れ、里芋、水菜、白菜、ニンニクの葉、豆腐などを具にすると紹介されています。
正月
焼きアゴ(トビウオ)のだしに、ブリと丸餅、高菜の仲間のかつお菜、里芋、人参、しいたけなどを入れる具だくさんの雑煮です。来客の多い博多の商家では、具を一人分ずつ竹串に刺して用意し、手早く振る舞ったといわれます。
元旦
土鍋のだし汁で丸餅、鶏肉、白菜、人参、ごぼう、干ししいたけ、高野豆腐などを炊き、そのまま食べる具だくさんの雑煮です。島原の乱で籠城した際の兵糧が始まりといわれ、店では季節を問わず提供されています。
正月や祭礼の日(店では通年)
出水沖でとれたエビを炭火で乾燥させた焼きエビと干ししいたけで出汁をとり、焼いた餅に椀からはみ出すほどの焼きエビ、里芋、豆もやしなどをのせます。薩摩藩主・島津家のえび雑煮が庶民に広まったとされます。
正月三が日
名前をタップすると、地図で詳しく見られます。
「雑煮」の文字が確認できる最も古い文献は、京都・吉田神社の神職の家の記録『鈴鹿家記』の貞治3年(1364年)正月の記載とされています。正月三が日に餅入りの雑煮を食べる風習は平安時代にはあったともいわれ、室町時代に武家の祝い膳として広まりました。
伝承料理研究家の奥村彪生さんは、雑煮は室町時代、京都の上級武家の婚礼で「固めの盃」の肴として、望月になぞらえた丸い小餅と海山の幸を一つ鍋で煮たのが始まりで、それが正月祝いやもてなしの料理として京都から全国へ広がったと説明しています。
身分に関係なく正月に食べられるようになったのは江戸時代からと伝えられます。元旦に一年最初の水「若水」を汲み、清めた火を使って一つの鍋で煮て家族で分かち合う、正月の祝い膳の主役として定着していきました。
農林水産省の広報誌では、餅の形の境目は岐阜県の関ケ原辺りで、関ケ原より東は角餅、西は丸餅が一般的と紹介されています。境界線上にある岐阜・石川・福井・三重・和歌山の5県では、両方が使われているところもあるそうです。
餅はもともと丸い形で、角餅は江戸時代に広まったものとされます。長屋暮らしで餅をつく道具や場所のない町民のもとへ出向いてつく「賃つき餅屋」が、平たく伸ばしたのし餅で売ったため、人々はそれを四角く切って食べました。平たく伸ばして切り分ける方法は運搬にも便利で、江戸から徐々に広まったと説明されています。
例外もあります。東日本でも、北前船が運んだ京都文化の影響が強い山形県庄内地方や、つきたての餅を食べる習慣のある岩手県一関市では丸餅が主流です。西日本でも、藩主が長く江戸に留まったとされる高知県(土佐)と鹿児島県(薩摩)には角餅を使う地域があります。
東日本を中心に広く見られるのが醤油や塩で味をつけたすまし汁です。東京の江戸雑煮も、当初は味噌仕立てだったものが、元禄年間に野田・銚子で醤油づくりが盛んになって濃口醤油のすまし汁になったとされます。
京都・大阪・奈良・香川・徳島などでは白味噌仕立てが親しまれ、具の大根や人参、里芋を丸く切って円満を願います。福井の雑煮は丸餅を味噌で煮るシンプルなもの、鳥取や島根東部では甘い小豆汁に丸餅を入れる小豆雑煮が食べられています。徳島・祖谷のうちがえ雑煮のように、餅の代わりに岩豆腐を使う雑煮もあります。
もち米とうるち米の違いはでんぷんの成分にあり、もち米は粘りのもとになるアミロペクチンがほぼ100%です。お雑煮の餅は、つきたての餅を丸めた丸餅、平たく伸ばして切った切り餅(角餅)があり、地域の形に合わせて選ぶのが楽しみの一つです。
もち米の代表的な品種には、新潟県農業試験場で育成され1956年に命名された晩生の「こがねもち」や、旧東北農業試験場でこがねもちを父に交配して育成され、1972年に登録された中生の「ヒメノモチ」などがあります。餅を買うときは原料のもち米の品種や産地の表示を見て選ぶと、食べ比べもしやすくなります。
煮る地域の雑煮では、丸餅を汁と一緒に煮続けると柔らかくなりすぎるため、別の鍋でゆでておき、食べる直前に汁に入れる方法が紹介されています。焼く地域では、こんがり焼いた餅を椀に入れてから汁を注ぎます。
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