まつりずし(岡山ばらずし)
「岡山ばらずし」「備前ばら寿司」とも呼ばれる華やかなちらしずしです。江戸時代の倹約令に対し、具を寿司に混ぜ込めばおかずではないとして十種余りの魚介や野菜を入れたのが始まりと伝わります。蒸して温める「ぬくずし」という食べ方もあります。
食べる時期・場面
春・秋の祭り、盆、法事など来客のもてなし
ひな祭りの料理として親しまれているちらし寿司ですが、農林水産省によると、料理そのものにひな祭りのいわれはないそうです。それでも、えびやれんこん、豆など縁起のよい食材を使い、華やかに盛り付けられることから、女の子の成長を祝うごちそうとして定着してきました。
地域に目を向けると、酢飯に具を混ぜ込む「ばらずし」、木枠で何段にも重ねて押す「箱ずし」「こけらずし」、地酒をまぶす鹿児島の「酒ずし」など、形も味もさまざまです。多くは祭りや祝い事、来客のもてなしに作られてきたハレの日の料理です。
このマップでは、農林水産省「うちの郷土料理」や自治体の資料で確認できた各地のちらし寿司・ばら寿司・押し寿司を、ばら寿司・押し寿司・混ぜ寿司の3つに分けて紹介します。ひな祭りの献立選びや、旅先での食べ歩きの参考にしてください。
色のついた都道府県をタップすると、その土地のちらし寿司・ばら寿司が出てきます。
※ 県の色は、紹介しているもの(いちばん上)の分類です。郷土の味は地域・家庭によって違います。
「岡山ばらずし」「備前ばら寿司」とも呼ばれる華やかなちらしずしです。江戸時代の倹約令に対し、具を寿司に混ぜ込めばおかずではないとして十種余りの魚介や野菜を入れたのが始まりと伝わります。蒸して温める「ぬくずし」という食べ方もあります。
春・秋の祭り、盆、法事など来客のもてなし
黒豆の産地・勝英地域のちらしずしです。煎った黒豆を米と一緒に炊き込み、合わせ酢を加えると酢飯が桜色に色づきます。ごぼうやにんじん、かまぼこを混ぜ、錦糸卵やしいたけ、さやいんげんで飾ります。
祭りや法事などの集まり
見た目はばら寿司のような炊き込みご飯ですが、酢が混ぜられているのが最大の特徴で「煮込み寿司」とも呼ばれます。酸っぱくなったどぶろくをご飯にぶちまけた「どぶろく飯」が名前の由来とされます。
まつぶたと呼ばれる浅い木箱にすし飯を敷き、甘辛く炒り煮にしたサバのおぼろと錦糸卵、かまぼこ、紅しょうがなどを散らします。サバのおぼろは必須で、二段に重ねる家庭もあります。近年はサバ缶でおぼろを作ることも多いそうです。
祭りや結婚式のほか、雛祭り・運動会・正月・盆など大勢が集まる席
刻んだ具をすし飯に混ぜ込む五目ずしです。関西では具を混ぜ込むスタイルが主流で「ばらずし」と呼び、刺身は必須ではありません。余った分は翌日に蒸して「蒸しずし(温ずし)」として食べる習慣もあります。
祝い事や祭りなどハレの日。年間を通して食べられる
押し寿司や巻き寿司などをまとめた大阪の寿司の総称で、代表格は木枠で押す箱寿司です。明治時代に船場の寿司店が鯛やえび、あなごを使った箱寿司を考案し、色とりどりの一口寿司が観劇の幕間弁当や手土産として広まりました。
観劇のお供やハレの日のごちそう
酢飯に季節の野菜などの具を混ぜたハレの日のすしです。客用には酢じめのサワラやアナゴの照焼き、錦糸卵、木の芽などをあしらいます。宇多津町では砂糖が手に入りやすかった歴史から甘い味付けのばらずしが作られてきたと推測されています。
神社の春秋の祭り、馬節句、ひな祭り、棟上げ、結婚披露宴、法事など
四角や扇、松、梅などの型にすし飯と煮た野菜をはさみ、上にサワラや山椒、そら豆、エビ、卵焼きを並べて押し出すすしです。サワラの旬に親類を招く「春祝魚(はるいお)」の主役とされ、嫁の里帰りの手土産にもなりました。
4月下旬〜6月のサワラの旬
甘く煮た金時豆と旬の具材を酢飯に混ぜる徳島のばら寿司です。合わせ酢にすだちやゆこうなどのかんきつ酢を使うのが特徴で、「まぜくり」「かきまぜ」「おすもじ」などの呼び名もあります。陰暦10月の亥の日に作るものは「いのこずし」と呼ばれます。
祭りや節句などの祝い事。春の節句には山菜やたけのこを加えることも
柚子酢「ゆうのす」を混ぜた酢飯を四角い押し枠に詰め、間ににんじんやごぼう、金時豆などの煮物をはさむ押し寿司です。上には柚子の皮や卵、桜でんぶなどを飾ります。割ると中から煮物が出てくるのが特徴です。
祭りや祝い事、正月、行楽の弁当
鹿児島ではちらしずしを女房言葉から「すもじ」と呼びます。身近な季節の食材を10種類前後使って色鮮やかに仕上げる庶民のすしで、地酒(灰持酒)を手につけて具と酢飯を混ぜたり、振りかけたりするのが特徴です。
雛祭りや卒業式・入学式など春先の祝いの席
地酒の灰持酒(あくもちざけ)をまぶしたご飯に、タイやたけのこ、つけあげなど10種類ほどの具を2〜3層に重ね、軽く重石をして半日ほど発酵させます。島津の殿様の花見の残りものから生まれたという言い伝えがあります。
かつては花見の席の春のごちそう。現在は祝いの席など
串に刺してじっくり焼いたサバの身をほぐし、合わせ酢になじませて酢飯に混ぜるちらしずしの一種です。米ともち米を合わせてやや硬めに炊くのが特徴で、甘辛く煮たにんじんやしいたけも混ぜ、錦糸卵や刻みのりで彩ります。
季節を問わず食卓に並ぶ
魚や肉を使わない野菜中心の押しずしです。酢飯と甘辛く煮たにんじん・ごぼう・しいたけを木枠で重ね、錦糸卵や桜でんぶ、山椒の葉で飾ります。石見銀山の代官の奥方が江戸の味を伝えたのが始まりともいわれます。
ハレの日。祝宴のほか出産祝いや病気見舞いにも
瀬戸内の小魚でとった出汁と甘めの酢で酢飯を作り、刻んだアナゴや季節の野菜を混ぜ込んで錦糸卵や魚介で飾るばら寿司です。正岡子規の母が夏目漱石をもてなした料理として伝わり、「もぶる(混ぜる)」が別名の由来です。
祝い事や来客時、人が集まる時
米酢が貴重だった愛媛県南部で、柑橘の果汁を酢の代わりに使ったのが始まりとされるすしです。米をみかんの生ジュースで炊くため、合わせ酢の砂糖は控えめにします。上にさまざまな具を彩りよくのせて食べます。
祝いの席やおもてなし
豊前海でとれるアカエビを茹でて干した「かちえび」を米と一緒に炊き、ごぼう・干ししいたけ・煮豆を合わせた酢飯に混ぜるちらしずしです。身近な乾物を組み合わせたごちそうで、油揚げに詰めた「かちえびいなり」はさらに格上とされました。
祭りや来客時のごちそう
一辺15cmほどの正方形の木型「物相」で作る押しずしです。人参やごぼう、干ししいたけ、油揚げを煮て酢飯に混ぜ込み、型で押して白身魚と木の芽を添えます。米が貴重な時代に皆へ平等に切り分けるために物相を使ったといわれます。
4月の金毘羅祭りや2月の稲荷祭り、農繁期
クマ笹の上に酢飯をのせ、山菜や野沢菜漬け、錦糸卵、田麩などを彩りよく盛り付けた寿司です。具を酢飯に混ぜて作る地域もあり、笹を舟形や三角に折る包み方もあります。箸を使わず手で持って食べられます。
お盆や祭りなど人が集まるハレの日
笹の上に酢飯を敷き、ぜんまいやたけのこ、しいたけ、くるみなど山の幸をのせて錦糸卵や紅生姜で彩る郷土料理です。上杉謙信の軍勢にふるまわれたのが始まりという説があり、平成19年に長野県選択無形民俗文化財に指定されました。
祝い事や祭りなどの行事
朴の葉で酢飯を包む初夏の料理です。東濃では川魚の甘露煮や酢鯖、錦糸卵、紅ショウガなど7〜8種の具を酢飯にのせてから包む家庭が多く、飛騨ではミョウガと酢飯だけの素朴なものもあります。
5〜8月。田植えなど農休みのごちそう
一般にいう五目ずし(混ぜずし)で、「おまぜ」「かきまぜずし」とも呼ばれます。細かく刻んで煮た具と酢漬けの魚を酢飯に混ぜ、具材は5種類や7種類など奇数にそろえます。祝い事にはマグロやサンマを使います。
冠婚葬祭や人寄せ、珍しい食材が手に入った時
漁師が船上でとった魚をさばき、手で混ぜ合わせたことが名前の由来とされます。醤油などのタレに漬けたカツオやマグロの赤身を飯切りに入れた酢飯にのせ、しそや海苔を散らします。農山漁村の郷土料理百選にも選ばれています。
人が集まる機会や宴会のおもてなし
彩りのよい5種類の具をすし飯にのせ、山いちごや花みょうがの葉をはさんで3〜5段重ねて押すすしです。具のうち1種は必ず酢の物にした魚を使います。家庭では弁当箱で代用する方法も紹介されています。
祭りや結婚式、還暦・厄祝い
四角い木枠で一度に6〜8個作る押し寿司で、「田舎寿司」とも呼ばれます。上にはしめさばや薄焼き卵、でんぶ、山椒の葉などを並べ、中には濃いめに煮たにんじんやごぼうを入れるため、食べ進めると煮物の味が広がります。
正月・花見・盆・秋祭りや来客のもてなし
藩主・吉川公に献上されたと伝わる押し寿司です。チシャの葉を敷いた木枠に、魚のすり身を混ぜた寿司飯を詰め、錦糸卵やでんぶ、岩国れんこんの酢漬けで彩る工程を3〜5段重ねます。家庭では弁当箱や牛乳パックで代用します。
祝いの席
5〜6段重ねる専用の木箱にすし飯を詰め、エビやアナゴ、干ししいたけ、錦糸卵などを斜めに並べて押します。具を斜めに配置するのは、皆が平等にいろいろな味を楽しめるようにという配慮からと伝わります。
祝い事や祭り事など人が集まる時
室町時代、領地を取り戻した大村純伊を領民が祝い、もろぶたに広げたご飯に具を二重にのせた押し寿司を急ごしらえしたのが起源とされます。砂糖をたくさん使った甘めのシャリが特徴で、来客をもてなす気持ちの表れといわれます。
祝い事や祭、仏事など特別な時
大村寿司と同じ由来をもつ県北の押し寿司で、浅い木箱「もろぶた」で作ります。シャリの間に挟む具に地元の鯛を必ず入れ、味付けは大村寿司より少し甘めです。シャリで具を挟む形に武士の心得を重ねる言い伝えもあります。
おくんち(秋祭り)や出初め式など、めでたい席
もろふたと呼ばれる木箱に詰めた酢飯に四角く切り目を入れ、ムツゴロウのかば焼きや奈良漬、錦糸卵、甘辛く煮たシイタケなどをそれぞれこんもりとのせます。米の品質改良に尽くした領主に領民が献上したのが始まりと伝わります。
祭りや祝い事、嫁いだ娘の里帰りの歓迎
キンメダイで作った紅白のそぼろ(おぼろ)をのせた押し寿司です。甘く煮たにんじんを真ん中に詰めた酢飯を型で押し、マグロの赤身やしいたけ、玉子焼きの押し寿司とセットにすることもあります。その大きさが名前の由来といわれます。
成人式・七五三・結婚式などの祝い事
木箱に詰めた酢飯に、サバのそぼろ(おぼろ)や煮たにんじん、しいたけ、桜エビなどをのせる箱寿司です。日蓮上人をかくまった漁師が井桁の重箱で食事を運んだことが由来と伝わり、近年はサバ缶を使うことも多いそうです。
祭りや行事などのハレの日
鯛やベラ、トラハゼなどの身をほぐして甘辛く炒り煮にしたそぼろを、酢飯にのせて押した寿司です。名前は木の細片「こけら」を並べた様子に似ているからなど諸説あります。近年は生の魚を焼いてそぼろにすることもあります。
秋のだんじり祭りや正月、冠婚葬祭
すし飯の上に焼いてほぐした魚やしいたけ、人参、卵などをのせ、木枠で押し固めたすしで、押しずしの原型ともいわれます。和歌山市雑賀崎ではエソのそぼろを使い、那智勝浦町では黒豆や川エビを散りばめるなど地域で具が異なります。
夏祭りや秋祭りなどのお祝い事
四角い木枠に酢飯と具を何層も重ねる押しずしで、デコレーションケーキのような見た目が特徴です。具を重ねる様子に「喜びを重ねる」意味を持たせた縁起物とされ、大きいものは米5升を使います。東洋町白浜では毎年1月に「こけらまつり」が開かれます。
祝い事や神事
2升の米が入る寿司桶にすし飯と具を4〜5段重ねて押す箱寿司です。一段ずつ取り分けて食べることが名前の由来で、一度に20〜40人分作れます。法事にはちりめんじゃこを使わず、卵を湯葉に代えた精進の具で作ります。
ハレの日や人寄せ
名前をタップすると、地図で詳しく見られます。
ひな祭りは「上巳(じょうし)の節句」とも呼ばれ、宮中行事に由来する五節句のひとつです。人形を身代わりにして邪気を祓う「流し雛」が起源とされ、江戸時代には女の子の成長を祈って雛人形を飾る行事になりました。
ひな祭りの伝統的な料理としては、菱餅、はまぐりの潮汁、ちらし寿司が挙げられます。ただし農林水産省の解説によると、ちらし寿司という料理そのものにひな祭りのいわれはないそうです。由来には諸説ありますが、縁起のよい食材を使い、華やかに仕上がることから、お祝いのごちそうとして選ばれてきたと考えられます。
地域の郷土料理としては、香川の「ばらずし」、京都・丹後の「ばらずし」、鹿児島の「さつますもじ」などが、ひな祭りや春の祝いの席で食べられてきたことが紹介されています。
基本の流れは「米を炊く→合わせ酢を混ぜてすし飯にする→煮た具を混ぜる→錦糸卵などで飾る」です。具は干ししいたけ、にんじん、ごぼう、高野豆腐、かんぴょうなどを細かく切り、だしと醤油・砂糖で汁気がなくなるまで煮ておきます。
合わせ酢は砂糖と塩を溶かしておき、炊きたてのご飯に回しかけて、しゃもじで切るように混ぜます。香川県のレシピでは、すし桶に熱いご飯を移し、うちわであおいでつやを出す方法が紹介されています。
配合は地域や家庭で異なります。下の目安は農林水産省「うちの郷土料理」に掲載されたレシピからの例です。甘めが好みなら砂糖を増やすなど、調整して楽しんでください。
すし飯は合わせ酢を加える分だけ水分が増えるため、ふだんより少しかために炊くのが一般的です。鹿児島の「さつますもじ」のレシピでも「米はかために炊く」とされ、大阪のばらずしでは炊飯器の「すし飯用」の水量で炊く手順になっています。
香りや旨みを足したいときは、昆布や酒を加えて炊く方法があります(香川・岡山のレシピ)。島根の「すもじ」のように、米にもち米を合わせてやや硬めに炊き、もっちりとした食感にする地域もあります。
お米の銘柄に決まりはありませんが、一般に、粒がしっかりしていて混ぜてもつぶれにくいお米は、具や合わせ酢と混ぜる工程に向いています。ふだん食べ慣れたお米で、水加減を少し控えめにするところから試してみるとよいでしょう。
押し寿司系は、専用の木枠がなくても作れます。山口の岩国寿司は弁当箱やスクエア型、牛乳パックで代用でき、三重のこけらずしも弁当箱で作る方法が紹介されています。
余ったばらずしは、大阪では翌日に蒸して「蒸しずし(温ずし)」に、岡山では「ぬくずし」として温めて食べる習慣があります。具材は季節の食材を使うのが各地に共通していて、春ならサワラ、たけのこ、ふき、山菜などがよく使われます。
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