ニュースで「減反」「生産調整」という言葉を聞くことがあります。お米を作りすぎないように国が調整してきた仕組みのことですが、2018年に「廃止された」とも言われます。では、いま田んぼはどう動いているのでしょうか。公的な資料の数字で整理します。
① 減反の正式名称は「生産調整」。1969年に試験的に始まり、1971年から本格実施されました。
② 2018年に廃止されたのは「国が生産数量目標を配分する仕組み」で、転作を支える交付金は今も続いています(令和8年度予算2,612億円)。
③ 主食用米の作付面積は令和7年産で136.7万ha。前年から10.8万ha増え、調査開始以来もっとも大きな増え方でした。
減反政策とは?正式には「生産調整」
減反政策とは、お米が余らないように作る量を抑える政策のことです。行政上の正式な呼び名は「生産調整」で、「減反」は作付面積(反)を減らすことから広まった通称です。国立国会図書館の資料でも、農業者に作付面積の削減を求めることから一般に減反政策と呼ばれる、と注記されています。
始まりは1969年(昭和44年)。水田1万haを対象に、飼料作物などへの転換を促す試験的な実施でした。翌1970年は生産調整目標量100万トンの緊急的な措置、そして1971年(昭和46年)から「稲作転換対策」として本格実施されます。以後およそ40年にわたり、名前を変えながら9つの対策が続きました。
なぜ始まったのか|日本人がお米を食べなくなった
理由はシンプルで、お米が余ったからです。国民1人あたりの年間消費量は、1962年度(昭和37年度)の118.3kgをピークに減り続け、2024年度(令和6年度)は53.4kg。60年あまりで半分以下になりました。
作る量が変わらないまま食べる量が減れば、お米は余ります。実際、政府が抱えた過剰米の処理には、第1次(昭和46〜49年)で約740万トン・約1兆円、第2次(昭和54〜58年)で約600万トン・約2兆円という負担が生じました。生産調整は、この繰り返しを避けるための政策でした。
いまも需要は減り続けています
人口減少も重なり、主食用米の需要は年およそ10万トンずつ減っていく見通しです(農林水産省)。生産調整が終わっても、需要に合わせて作る量を考える必要は残っています。
どんな仕組みだったのか
時代によってやり方が変わっています。
- 1971年〜:農家に「転作面積」を割り当て、麦や大豆など転作作物への助成を出す方式。達成した農家だけが助成を受けられました。
- 2004年〜:面積ではなく「生産数量目標(作ってよいお米の量)」を配分する方式へ。
- 2010年〜:生産調整に参加するかどうかに関わらず、転作への助成が受けられる形に。
昭和53年以降は目標面積の割当が全国一斉となり、達成できない場合は翌年の割当が重くなるなど、実質的なペナルティもありました。
2018年の「減反廃止」で変わったこと・残ったこと
平成30年(2018年)産から、行政が生産数量目標を配分する仕組みが廃止されました。産地と生産者が需要を見ながら自分で作る量を決める形に変わったわけです。あわせて、米の直接支払交付金(10aあたり7,500円)も平成29年産限りで終わりました。
ただし「国が何もしなくなった」わけではありません。次の仕組みは今も続いています。
- 水田活用の直接支払交付金(麦・大豆・飼料用米などへの転換を支える)=令和8年度当初予算2,612億円
- 国が需給の見通しを示す「基本指針」の公表
- 都道府県ごとの作付意向の集計・公表
財務省の資料でも「2018年に生産調整(行政による生産数量目標の配分)が廃止された。一方で…水田活用の直接支払交付金が引き続き継続」と整理されています。目標の配分はやめたが、転作を支えるお金は残った——これが実態です。
数字で見る|主食用米の作付面積と生産量
実際の作付面積と生産量の推移です(主食用米。生産量は生産者が使用するふるい目幅ベース)。
| 年産 | 作付面積 | 生産量 |
|---|---|---|
| 平成25年産(2013) | 152.0万ha | — |
| 平成30年産(2018) | 138.6万ha | 708万トン |
| 令和3年産(2021) | 130.3万ha | 670万トン |
| 令和5年産(2023) | 124.2万ha | 639万トン |
| 令和6年産(2024) | 125.9万ha | 652万トン |
| 令和7年産(2025) | 136.7万ha | 718.1万トン |
令和7年産は前年から10.8万ha増。これは調査が始まった平成16年産以来もっとも大きい増加幅で、面積としては令和2年産以来の水準です。米不足と価格高騰を受けて、作付けが一気に戻ったことが数字に出ています。
2025〜2026年|増産か、需要に応じた生産か
方針は今も揺れています。2025年4月に閣議決定された新しい食料・農業・農村基本計画では、米(加工用米・新規需要米を含む)の生産量を令和5年度の791万トンから、令和12年度までに818万トンへ増やすと明記されました。
一方、令和7年10月に公表された基本指針では、令和8年産の主食用米等の生産量を711万トン、令和8/9年の需要量を694〜711万トンと見込んでいます。2026年産の作付意向(6月末時点)は主食用米136.0万haで、前年から0.7万haの減少。増産一色ではなく、需要を見ながらの調整に戻りつつあります。
さらに令和9年度からは水田政策そのものを見直し、水田活用の直接支払交付金を作物ごとの生産性向上を支える形へ転換する方針が示されています。いわゆる「5年水張り要件」も求めない方向です。
評価が分かれる論点
生産調整の評価は、立場によって変わります。事実として確認できる材料を並べます。
価格は守れたのか
調整面積は平成15年度に100万haを超えましたが、米価は昭和61年度の18,505円/60kgをピークに下がり続け、平成15年度は13,748円(ピーク比およそ26%減)でした。面積を減らしても価格の下落は止まらなかった、という指摘があります。一方で直近の令和7年産は相対取引価格が年産平均36,310円/60kg(前年比+11,131円、+44%)と高騰し、今度は需給の緩みと価格の関係が論点になっています。
お金の使い方として妥当か
財務省は、水田活用の直接支払交付金などが過去10年で1,000億円以上増えたこと、すでに水田の機能を失った農地への交付事例があることなどを指摘しています。
田んぼを守る役割
他方、交付金は主食用米との所得差を埋めて水田を維持する仕組みでもあります。農林水産省は麦32.8万ha・大豆17万ha(令和12年度まで)への拡大など、水田をフル活用して自給率を高める方向を示しています。輸出を想定した価格が約9,500円/60kgなのに対し、国内の平均生産コストは約16,000円/60kgで、コスト低減が最大の課題とされています。
私たちの食卓とのつながり
生産調整は遠い話に見えて、スーパーの棚に直結しています。作る量が絞られれば品薄と値上がりが起きやすく、増えれば価格は落ち着きやすい。2024年からの米価高騰と、令和7年産の作付急増は、その動きがそのまま表れた例です。
お米の値段がどう決まるのかは、お米が高い理由の記事で詳しく整理しています。田んぼの一年の仕事を知りたい方は米農家の1年もどうぞ。
よくある質問
減反政策はいつ終わったのですか?
「減反」と「生産調整」は違うものですか?
減反がなくなったのに、なぜお米が足りなくなったのですか?
いま田んぼは増えているのですか、減っているのですか?
- 農林水産省「米をめぐる状況について」(令和8年3月)
- 国立国会図書館『レファレンス』米の生産調整の経緯
- 財務省 財政制度等審議会 資料(令和7年11月)
- 農林水産省 令和7年産水稲の作付面積・収穫量
- 農林水産省 食料・農業・農村基本計画(2025年4月11日閣議決定)
- 農林水産省 令和8年産の作付意向(6月末時点)
制度や数値は改正・更新されます。最新の内容は各出典をご確認ください。








