田植えをせず、田に種籾を直接まく「直播栽培」のために開発された北海道のお米「えみまる」。低温でも苗が立ちやすく、食味はななつぼし並で、炊いてから時間がたっても柔らかさが続くため、お弁当などの業務用にも向いています。この記事では、道総研や農研機構の資料をもとに、えみまるの成り立ち、特徴、北海道での広がり、合う料理、令和8年産の商品までを紹介します。
・えみまるは道総研 上川農業試験場などが育成し、平成30年(2018年)に北海道の優良品種に認定された直播(ちょくはん)栽培向けの品種
・低温でも芽が出て苗が立ちやすく、食味はななつぼし並。炊いてから時間がたっても柔らかさが続くため、弁当などの業務用にも向きます
・北海道での栽培面積は令和元年の約400haから令和4年の約1,900haへ。そのほとんどが直播栽培です
「えみまる」とは|北海道の直播栽培から生まれたお米
| 産地 | 北海道 | 北海道 | 北海道 | 北海道 |
|---|---|---|---|---|
| 粘り | データなし | もっちり | もっちり | もっちり |
| 硬さ | データなし | やわらか | やわらか | やわらか |
| 食味 | — | 特A | A | — |
| 1kgあたり | ¥2,300〜 | ¥698〜 | ¥716〜 | ¥728〜 |
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粘り・硬さは編集部の目安(5段階)。食味は日本穀物検定協会「米の食味ランキング」第55回(令和7年産米)。価格は2026年10月9日時点の楽天市場の令和8年産(広告)。お米の品種一覧で全品種を比べる
えみまるは、北海道立総合研究機構(道総研)の上川農業試験場が、中央農業試験場・道南農業試験場と共同で育成したうるち米の品種です。育成中の系統名は「上育471号」。「緑系07216」を母、「上系06181」を父として育成されました。農研機構 生研支援センターの資料によると、母の緑系07216は低温でも発芽後の初期の生育がよい性質を、父の上系06181は低温と病気に強い性質を持ち、えみまるはその両方を受け継いでいます。
えみまるは平成30年(2018年)に北海道の水稲優良品種に認定され、令和5年に品種登録されました。名前には、省力化生産が可能で味もよいことから、生産者も消費者も笑顔になるという意味が込められています。
| 項目 | えみまるの基本データ |
|---|---|
| 育成 | 道総研 上川農業試験場(共同育成:中央・道南農業試験場) |
| 系統名 | 上育471号 |
| 交配 | 緑系07216(母)× 上系06181(父) |
| 北海道優良品種 | 平成30年(2018年)認定 |
| 品種登録 | 令和5年 |
| 主な栽培方法 | 直播栽培(田に種籾を直接まく方法) |
| 食味 | ななつぼし並 |
| 主な用途 | 家庭用のほか、弁当・外食などの業務用 |
| 食味ランキング | 第55回(令和7年産)の産地別ランキング表に掲載なし |
直播栽培とは?えみまるが必要とされた理由
お米づくりといえば春の田植えのイメージがありますが、これはハウスで育てた苗を田に植える移植栽培です。苗を育てたり、重い育苗箱を運んだりする作業は機械化が難しく、規模を広げるうえでの妨げにもなっています。そこで注目されているのが、種籾を直接田にまく直播栽培です。田植えも苗づくりもいらないため、作業を大きく減らせます。
北海道では農家の高齢化や戸数の減少が進み、稲作の大規模化と省力化が求められてきました。ただ、それまで直播栽培に使われていた「ほしまる」は、低温の条件では芽が出にくく苗がそろわない(低温苗立性が劣る)ため、年によって生産量が不安定で、収量も十分ではありませんでした。北海道の冷涼な春でもしっかり苗が立ち、収量が多く、おいしい品種として開発されたのがえみまるです。
研究グループの代表機関である道総研の宗形信也氏は、農研機構の資料で「北海道の冷涼な気象条件下で安定した苗立確保が可能な品種育成には非常に長い間取り組んでおり、なかなか実用品種までは育成できませんでした」と振り返っています。
えみまるの特徴
① 低温でも苗が立ちやすい
道総研上川農業試験場の資料では、13〜14℃の低温条件での室内検定で、えみまるの苗立率はほしまるより高い結果でした。低温でも芽が出て苗が立つことが、直播栽培を安定させる何よりの条件です。いもち病にも強いため、直播栽培でも安定して収量を得やすいとされています。
② ほしまるより多収で、玄米品質が優れる
道北・道央地域の直播栽培(平成27〜29年、普及見込み地帯の農試と現地の平均)で、えみまるの収量はほしまるより4%多くなりました。腹白や乳白などの白未熟粒が少なく、玄米の品質も優れています。
③ 食味はななつぼし並
食味は、北海道の移植栽培の主力品種であり、北海道でもっとも多く食べられている「ななつぼし」と同等と評価されています。ななつぼしについてはななつぼしとは?で詳しく紹介しています。
④ 炊いてから時間がたっても柔らかい=業務用に向く
えみまるは、実需者のニーズに対応して、炊飯後に時間がたっても柔らかさと美味しさが変わりにくい品種として開発されました。そのため、コンビニ弁当やレストランなどの外食向けといった業務用にも向いています。農研機構の資料では、業務用の酢飯を扱う実需者から「もともと道産の他品種を100%使用していたが、『えみまる』をブレンドすることでシャリに酢のノリがよくなりました」という評価が紹介されています。業務用米については業務用米とは?で解説しています。
北海道での広がり
農研機構の資料によると、北海道でのえみまるの栽培面積は令和元年の約400haから、令和4年には約1,900ha(1,927ha)と5倍近くに広がり、そのほとんどが直播栽培です。品種化した当初の普及予定面積1,000ha(目標年:令和5年)を上回りました。上川農業試験場の資料では、えみまるはほしまるの全てに置き換わると見込まれていました。
産地の中心は石狩・空知です。国土交通省北海道開発局の資料では、石狩・空知管内の令和5年の品種別作付面積割合はななつぼしが45.0%、ゆめぴりかが25.0%で、きらら397、ふっくりんこ、えみまるがそれに続くとされています。空知管内の直播面積は令和5年に3,000haを超えて全道一となっており、空知農業改良普及センターは、えみまるの乾田直播で10a当たり600kgの収量を目指す栽培の目安をまとめています。
普及が始まったころは、低温でも芽がよく出て生育が旺盛になるぶん倒伏が多くなったという声もありましたが、播種量を減らすなどの工夫で、えみまるの特性を生かせるようになってきたといいます。令和2年にえみまるを導入し、水稲22haをすべて直播に切り替えて、1名の労働力で経営している農家の例も紹介されています。北海道のほかのお米は北海道のお米でまとめています。
えみまるに合う料理
ななつぼし並の食味で、時間がたっても柔らかさが続くという特徴から、次のような食べ方が向いています。
お弁当・おにぎり:炊いてから時間がたっても柔らかさと美味しさが変わりにくいので、作り置きのお弁当に合います。
酢飯・手巻き寿司:業務用の酢飯を扱う実需者から、酢のノリがよくなったという評価があります。
毎日の白ごはん:ななつぼし並の食味で、家庭の普段のごはんとしても食べやすいお米です。
丼もの・カレー:北海道の業務用米と同じく、たれやルーと合わせる料理にも使いやすい方向です。
えみまるを美味しく炊くコツ
基本は、① 精米日の新しいものを選ぶ(お米は精米後から少しずつ風味が落ちます)、② 最初の水はすぐ捨て、やさしく研ぐ、③ しっかり浸水する(目安は夏30分・冬1〜2時間)、④ 水加減は炊飯器の目盛りを基準に好みで微調整、⑤ 炊き上がったらすぐ底から返してほぐす、の5つです。
お弁当用に炊くときは、炊き上がり後すぐに底から返して余分な水分を飛ばし、粗熱を取ってから詰めると、時間がたってもべたつきにくくなります。
えみまるの保存方法
お米は乾物に見えて、実は温度・湿度・においの影響を受けやすい食品です。袋のまま常温に置くより、密閉できる容器に移して冷蔵庫の野菜室で保存すると、風味の低下や虫の発生を抑えられます。においの強いものの近くは避け、精米後はおおむね1か月を目安に食べきれる量を買うのが、いちばん失敗の少ない方法です。玄米で買って食べる分だけ精米する方法もあります。新米の時期にまとめ買いするなら、5kg袋を複数に分けて届くタイプを選ぶと、開封後の鮮度を保ちやすくなります。
えみまるの商品(令和8年産)
楽天市場で、商品名に「えみまる」と「令和8年」が入った商品を探し、ほかの品種とのセットを除いたところ、北海道芦別市と南幌町のふるさと納税返礼品が見つかりました。業務用としての利用が多い品種のため、家庭向けの通販では出品は多くありません。
北海道芦別市のふるさと納税返礼品。農家直送の10kgです。
北海道南幌町のふるさと納税返礼品。5kg・10kgから選べます。
北海道芦別市のふるさと納税返礼品。商品名に「直播米」と書かれた5kgです。
※商品は2026年10月時点で楽天市場に掲載されている令和8年産の商品から、商品名に品種名が入っているものを選んでいます。ふるさと納税の返礼品は表示額が寄附額です。
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北海道のお米は北海道のお米、食味の比較対象のななつぼしはななつぼしとは?で紹介しています。お弁当や外食で使われるお米は業務用米とは?、全国の品種を食感で比べたい人はお米大全へ。
まとめ|えみまるは直播栽培と業務用を支える北海道のお米
えみまるは、道総研上川農業試験場などが育成し、平成30年に北海道の優良品種となった直播栽培向けの品種です。低温でも苗が立ちやすく、ほしまるより多収で、食味はななつぼし並。炊飯後に時間がたっても柔らかさが続くため、弁当などの業務用にも向いています。北海道での栽培面積は令和4年に約1,900haまで広がり、北海道の稲作の省力化を支えるお米になっています。
よくある質問
えみまるはどこのお米?
えみまるはいつできた品種?
えみまるの名前の由来は?
えみまるは直播栽培向けの品種?
えみまるは業務用のお米?
えみまるはどんな味?
- 道総研 上川農業試験場「直播(ちょくはん)栽培はお任せください!水稲『上育471号』」(2018年10月)(https://www.hro.or.jp/upload/1322/29seika(4).pdf)
- 農研機構 生研支援センター こぼれ話56「北海道の直播栽培に適した、業務用にも向く良食味の水稲新品種『えみまる』」(令和6年5月)(https://www.naro.go.jp/brain/contents/ep_056.pdf)
- 空知農業改良普及センター「乾田直播水稲『えみまる』10俵どりに向けて」(https://www.hro.or.jp/upload/assets/list/agricultural/center/shingijutsu/42/2_1.pdf)
- 国土交通省北海道開発局「石狩・空知管内でつくられているお米の紹介」(https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/toti_kairyou/kluhh4000000e1pd-att/gburoi000000ye9z.pdf)
- 日本穀物検定協会 米の食味ランキング 産地別表(令和5〜7年産)(https://www.kokken.or.jp/data/rank_sanchi.pdf)
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