「日本のお米は100%国産」と思われがちですが、実は毎年およそ77万トンのお米が輸入されています。では、そのお米はどこへ行っているのでしょうか。自給率の数字と、輸入米の行き先を、農林水産省などの資料で確認できる範囲で整理します。
① 米の自給率は重量ベースで97%、カロリーベースで99%(令和6年度)。ほぼ国産ですが100%ではありません。
② 差の正体はミニマムアクセス米。WTO協定にもとづき年76.7万玄米トンを国が輸入しています。
③ その行き先は、これまでの累計で飼料用46%・加工用27%・援助用15%・主食用8%。食卓に出る分はごく一部です。
お米の自給率は何%?
令和6年度(2024年度)の数字です。
| 指標 | 米の自給率 |
|---|---|
| 重量ベース | 97% |
| カロリーベース | 99% |
| 生産額ベース | 101% |
| (参考)食料全体のカロリーベース | 38% |
食料全体が38%であることを考えると、お米は突出して自給できている品目です。生産額ベースが101%と100%を超えるのは、輸出や在庫の扱いによるものです。
なぜ100%にならないのか
計算式に理由があります。米の自給率は「国内生産量+国産米の在庫取崩し量」を「国内消費仕向量」で割って求めます。この分母に輸入されたミニマムアクセス米が含まれるため、97%という数字になります。
主食用に限ればほぼ100%です
輸入米の大半は飼料用・加工用・援助用に回り、主食用に出るのは限られています。ただし「主食用だけの自給率」という公式な数値は公表されていません。本記事では公表値である重量ベース97%を使っています。
ミニマムアクセス米とは何か
ミニマムアクセス(MA)米とは、WTO協定にもとづいて設けられた無税の輸入枠のことです。ガット・ウルグアイラウンドの合意を受け、1995年度から輸入が始まりました。
当初は関税化しない代わりに数量を上乗せする「特例措置」でしたが、1999年度に関税化へ転換。2000年度以降は年76.7万玄米トン(1986〜88年平均の国内消費量1,065万トンの7.2%)に縮小し、現在まで続いています。輸入は民間が自由に行うのではなく、国が行う国家貿易です。
令和6年度の実績は合計767千玄米トン。国別では米国346・タイ286・豪州70・中国42・その他24(千玄米トン)でした。
輸入米はどこへ行くのか|用途の内訳
平成7年4月から令和7年10月末までの累計2,194万トンの内訳です(速報値)。
| 用途 | 数量 | 割合 |
|---|---|---|
| 飼料用 | 1,018万トン | 約46% |
| 加工用(みそ・焼酎・米菓など) | 597万トン | 約27% |
| 援助用 | 337万トン | 約15% |
| 主食用 | 183万トン | 約8% |
| 在庫 | 39万トン | — |
いちばん多いのは家畜のえさです。主食用は全体の1割弱にとどまります。単年でみると、令和7米穀年度は主食用11万トン・加工用18万トン・飼料用50万トン・援助用0(速報値)でした。
主食用に回る分=SBSの仕組み
輸入米が主食用として流通する経路がSBS(売買同時契約)です。輸入業者と国内の実需者がペアで入札し、国の売渡価格と買入価格の差(マークアップ)が大きい順に落札。国が買入と売渡を同時に行います。
SBSの上限は年間10万実トン。さらに国産米への影響を抑えるため、国は毎年度10万トン以上の国産米を政府備蓄用に買い入れています。国産米の需給が緩むと落札は伸びず、引き締まると増える傾向があり、令和5年度は66千トン、令和6年度は上限いっぱいの100千トンが落札されました。
農林水産省は、MA米の主食用は主に中食・外食向けと説明しています。
2025年に起きた変化|枠外輸入の急増
MA枠の外でもお米は輸入できます。ただし1kgあたり341円の関税(WTO協定税率)がかかるため、これまでは採算が合わず、年600〜800トン程度しかありませんでした。
ところが国内の米価が上がったことで、関税を払っても引き合うようになりました。
| 年度 | 枠外輸入量(実トン) |
|---|---|
| 2023年度 | 730 |
| 2024年度 | 3,011 |
| 2025年度(4月〜2026年1月累計) | 99,569(うち米国産78,783) |
前年度比でおよそ30倍、米国産に限ればおよそ190倍です。SBSの上限10万トンが全量落札され、落札できなかった事業者が関税を払って輸入した、というのが農林水産省の説明です。
輸入米はどこで食べているのか
公的資料から言えるのは次の範囲です。
- MA米の主食用は、主に中食・外食向け(弁当、惣菜、飲食店など)
- 加工用はみそ・焼酎・米菓などの原料
- 一般輸入分は「価格の面で国産米では対応しがたい加工用・飼料用等」に販売
- 枠外輸入は用途が民間の判断なので、相当数量が主食用に回る可能性がある
なお、家庭用の袋詰めとして流通する輸入米の割合を示す公的な統計は見当たりませんでした。袋の表示で国産かどうかを見分ける方法は、単一原料米と複数原料米の違いで解説しています。
よくある誤解を整理する
「日本のお米は全部国産」
正しくありません。国家貿易として年77万玄米トンが輸入され、2025年度は枠外輸入も約10万トンに達しました。
「ミニマムアクセスは輸入の義務」
半分だけ正しい表現です。平成6年の政府統一見解では、日本が負う法的義務は輸入機会を提供することであり、輸出国の事情で実際の数量に満たなくても義務違反にはならないとされています。同時に「通常の場合には当該数量の輸入を行うべきもの」とも述べられており、全量を輸入するのは日本政府の運用方針です。
「輸入米が食卓にあふれている」
累計2,194万トンのうち主食用は183万トン(約8%)です。大半は飼料用・加工用・援助用に回っています。
「関税がゼロだから輸入が増えた」
逆です。無税のMA枠には上限があり、2025年度に急増したのは341円/kgの関税を払った枠外輸入でした。
よくある質問
日本の米の自給率は何%ですか?
ミニマムアクセス米は毎年どれくらい輸入されていますか?
輸入されたお米はスーパーで売られていますか?
輸入米に関税はかかりますか?
- 農林水産省「米をめぐる状況について」(令和8年3月)
- 農林水産省 令和6年度food自給率(2025年10月10日公表)
- 農林水産省 品目別自給率等
- 農林水産省 ミニマム・アクセス米の運用改善等に関する報告
- 農林水産省 食料・農業・農村政策審議会 資料(MA米の状況)
- 税関 実行関税率表(2026年1月1日版・第10類)
制度や数値は改正・更新されます。最新の内容は各出典をご確認ください。








