毎日食べるごはん。そのお米は、田んぼでどんなふうに育てられているのでしょうか。米作りは春の「種もみ選び」から始まり、苗づくり、田植え、夏の水の管理、秋の稲刈り、乾燥・もみすりまで、半年以上をかけて進みます。この記事では、月別の作業カレンダーとイラストで1年間の流れを追いながら、それぞれの作業が「なぜ必要なのか」まで、農林水産省や県の資料をもとに解説します。
① 春(3〜5月)に種もみの準備・苗づくり・田おこし・代かきをして、5月ごろに田植え。
② 夏(6〜8月)は水の管理と中干し。穂が出て花が咲き、実が太っていきます。
③ 田植えから約4か月で稲刈り(農林水産省 北陸農政局)。乾燥・もみすりを経て、玄米として出荷されます。
米作りの1年間の流れ【月別カレンダー】
まずは1年間の全体像です。新潟県長岡地域のコシヒカリ(令和8年)の作業日程と、石川県がまとめた米作りの暦をもとに、主な作業を月ごとに並べました。
出典:新潟県 長岡農業普及指導センター「令和8年 稲作技術情報」(コシヒカリ)、石川県「お米ができるまで」。月は目安で、地域・品種・その年の天候で変わります。令和8年の長岡は出穂が早く、収穫適期のめやすは8月30日でした。
大きく分けると、春は準備と苗づくり、初夏に田植え、夏は水の管理、秋に収穫という流れです。ここからは、それぞれの作業を順番に見ていきましょう。
春①|種もみの準備(3〜4月)
米作りは、前の年にとれた「種もみ」を選ぶところから始まります。
塩水選(えんすいせん)|中身の詰まったもみを選ぶ
塩水に種もみを入れると、中身の詰まった重いもみは沈み、軽いもみは浮きます。沈んだもみだけを使うことで、元気な苗がそろいやすくなります。山形県の資料では、塩水の比重をうるち米1.13、もち米1.08にして選別し、そのあときれいな水で洗うよう呼びかけています。
浸種(しんしゅ)|水を吸わせて目覚めさせる
選んだもみは、水に浸けて十分に水を吸わせます。発芽をそろえるための作業です。農林水産省 北陸農政局は「積算水温約100℃(水温10〜15℃)を目安にして7〜10日程度」と説明しています。積算水温とは、毎日の水温を足し合わせた値のこと。たとえば水温10℃なら10日で100℃になります。
催芽(さいが)|芽を少しだけ出す
水を吸ったもみを温めて、芽を1mmほど出させます。山形県の資料では「水温30〜32℃、20時間浸漬が目安」とされ、もみの先が鳩の胸のようにふくらんだ「ハト胸状態」を確かめてから終えます。
春②|種まき・苗づくり(4〜5月)
芽の出たもみを、土を入れた「育苗箱」にまきます。北陸農政局によると、1箱あたり120〜150g(乾燥もみ換算)が目安です。苗は次の3つの段階を経て、田植えができる大きさに育ちます。
苗を育てる日数は、苗の種類や温度のかけ方で変わります。
| 地域・苗の種類 | 育苗日数の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 新潟県長岡(加温育苗) | 18日程度(5月10日田植えの場合) | 長岡農業普及指導センター |
| 新潟県長岡(無加温育苗) | 21日程度 | 同上 |
| 山形県最上(稚苗) | 25日間(5月20日頃田植えの場合) | 最上総合支庁 |
| 山形県最上(中苗) | 35日間 | 同上 |
| 山形県最上(高密度播種苗) | 15〜20日間 | 同上 |
令和8年の長岡地域の例では、加温育苗の場合、浸種4月10日→催芽4月20日→種まき4月22日→田植え5月10日という日程が示されています。
春③|田おこし・代かき・田植え(3〜5月)
田おこし(耕起)
冬の間休んでいた田んぼの土を掘り起こし、細かくする作業です。北陸農政局は「こうすることで根の発育がよくなります」と説明しています。
代かき(しろかき)
田んぼに水を入れ、肥料をまき、田面を平らにします。北陸農政局によると「水もちをよくする、田植えを楽にする、雑草の発生を抑える」といった効果があります。田んぼが平らでないと、水の深さにむらができ、苗の育ち方もばらばらになってしまいます。
田植え
育てた苗を、田植機で田んぼに植えます。苗を育ててから植える方法を「移植栽培」といいます。新潟県長岡の資料では、1株あたり3〜4本の苗を植えるのが適切とされています。令和8年の長岡地域のコシヒカリでは、調査した24か所の田植え日の平均は5月11日でした。
「遅くとも5月末までに」
長岡農業普及指導センターは、田植えは遅くとも5月末までに終えるよう計画することを呼びかけています。田植えが遅れると、その後の生育や収穫の時期にも影響するためです。
夏①|水の管理と中干し(6〜7月)
田植えのあとの苗は、根元から新しい茎を次々に出して株が大きくなります。これを「分げつ(ぶんげつ)」といいます。夏の田んぼでいちばん大切なのが、水の量の調整です。
中干し(なかぼし)とは
農林水産省は中干しを「水稲の栽培期間中、出穂前に一度水田の水を抜いて田面を乾かすことで、過剰な分げつを防止し、成長を制御する作業」と説明しています。北陸農政局によると、1株あたり14〜18本の茎数になったら、田んぼに溝を切り(溝切り)、田んぼを乾かします。
新潟県長岡の資料では、中干しの効果として次の4つを挙げています。
| 中干しの効果 | なぜ大切? |
|---|---|
| 過剰な分げつを抑える | 適正な生育量(もみの数)になり、品質の低下を抑える |
| 下の茎の伸びを抑える | 稲が倒れにくくなる(倒伏の防止) |
| 土に酸素を送る | 根が元気になる |
| 田んぼを固める | 秋にコンバインが入りやすくなる |
中干しは出穂の1か月前までに終え、その後は浅く水を入れては抜く「間断かん水」を数日おきに繰り返します(新潟県 三条農業普及指導センター)。
穂肥(ほごえ)|穂のための追加の肥料
稲の茎の中で穂のもと(幼穂)ができ始めたころに、追加の肥料をまきます。新潟県上越地域の資料では、1回目の穂肥はもみの数を確保して収量を上げるため、2回目は実の入り(登熟)をよくするための肥料とされ、コシヒカリの目安は1回目が出穂の18〜15日前、2回目が出穂の10日前です。
夏②|出穂・開花・登熟(7〜8月)
北陸農政局によると、幼穂ができてからおよそ30日後、茎の中から穂が現れます。これが出穂(しゅっすい)です。出穂し始めてまもなく、穂の先から花が咲きます(開花)。令和8年の長岡地域では、コシヒカリの多くが7月24日〜26日ごろに出穂しました(この年は「過去になく早い出穂」とされています。平年並みだった令和7年の上越地域では、8月1日ごろの予想でした)。
花が咲いて受粉すると、もみの中で玄米が少しずつ育っていきます。これを登熟(とうじゅく)といいます。玄米が充実してくると穂は重くなって垂れ、稲は緑色から黄金色に変わっていきます。
暑すぎる夏は品質に影響
登熟の時期の高温は、白く濁った「白未熟粒」が増える原因になります。くわしくは高温障害・白未熟粒とは?で解説しています。
秋①|稲刈り(8月末〜10月)
北陸農政局は「田植えをしてから約4ヶ月、イネを収穫します」と説明しています。稲が黄色くなり、もみの中の玄米が十分に熟して硬くなったら収穫の時期です。
刈り取りの時期の決め方
農家は、カレンダーの日付だけでなく、稲の状態を見て刈り取る日を決めます。目安になるのは主に2つです。
・積算気温:出穂してからの毎日の平均気温を足した値。新潟県長岡の資料ではコシヒカリの収穫適期を950℃、青森県は刈り取りを始める目安を960℃としています。
・もみの色:田んぼ全体のもみの85〜90%が黄色くなったら刈り取りを始めます(新潟県長岡)。
令和8年の長岡地域のコシヒカリは、出穂期7月26日、収穫適期のめやすは8月30日でした。稲刈りの時期は地域や品種でまったく違い、宮崎・鹿児島の早期米は7月中旬から、九州の多くの品種は10月中旬ごろが収穫の目安です。品種・産地ごとの時期は新米カレンダーにまとめています。
秋②|乾燥・もみすり・出荷(9〜10月)
コンバインで刈り取られた稲は、もみと茎に分けられ(脱穀)、もみを乾燥機で乾かします。青森県の資料では、乾燥後の仕上がり水分は15.0%が目標で、乾かしすぎると「胴割粒(どうわれりゅう)の発生や品質・食味の低下につながる」としています。
乾燥したもみからもみ殻を取り除くと玄米になります(もみすり)。玄米はこのあと農産物検査を受けて1等・2等などの等級が付けられ、出荷されます。わたしたちが食べる白米は、玄米の表面のぬかと胚芽を削り取ったものです(精米)。もみ・玄米・白米の違いはもみ・玄米・白米の違いで詳しく紹介しています。
稲刈りが終わった田んぼは、翌年の米作りに向けて準備が始まります。こうして、田んぼの1年がひと回りします。
数字で見る米作り
(令和6年産・全国・個別経営体)
(令和7年産・全国・ふるい目幅1.70mm)
(2025年農林業センサス・米に限らない)
10a(1,000㎡、約30m×約33m)の田んぼで米を作るのにかかる時間は、令和6年産の全国平均で21.26時間でした(農林水産省「農産物生産費統計」)。作業ごとの内訳は次のとおりです。
| 作業 | 時間(10aあたり) |
|---|---|
| 種子予措(塩水選・浸種など) | 0.24 |
| 育苗 | 2.48 |
| 耕起整地(田おこし・代かき) | 3.10 |
| 基肥 | 0.69 |
| 田植 | 2.53 |
| 追肥 | 0.20 |
| 除草 | 0.97 |
| 管理(水の管理など) | 5.38 |
| 防除 | 0.50 |
| 刈取脱穀 | 2.61 |
| 乾燥 | 1.28 |
| 生産管理 | 0.37 |
いちばん時間がかかるのは、田植えのあと毎日のように田んぼを見回る「管理」の作業です。同じ統計では、北海道は13.31時間、都府県は22.03時間と、地域によっても差があります。
10aあたりの収量は、令和7年産の全国平均で547kg(ふるい目幅1.70mmで選別した値。生産者が使っているふるい目幅での主食用は526kg)でした。茶碗1杯のごはん(約150g)はお米約65g・約3,250粒で、稲にすると約2.1株分です(農林水産省 北陸農政局)。
「米」という字は「八十八」の手間?
農林水産省の子ども向けページでは、「『米』という字は『八十八』という文字からつくられたといわれています。お米ができるまでには88回もの手間がかかる、という意味です」と紹介されています。字の成り立ちについての言い伝えですが、ここまで見てきたように、米作りは種もみ選びから乾燥・もみすりまで、たくさんの手間の積み重ねでできています。
次にごはんを食べるとき、田んぼの1年を少し思い出してみてください。
よくある質問
米作りは何月から始まる?
田植えから稲刈りまで、どのくらいかかる?
中干しはなぜするの?
稲刈りの時期はどうやって決める?
米作りでいちばん時間がかかる作業は?
10aの田んぼで、お米はどれくらいとれる?
- 農林水産省 北陸農政局「イネ栽培 主な仕事」
- 農林水産省 北陸農政局「移植栽培生育状況」
- 農林水産省 報道発表(中干しの定義)2023年11月16日
- 新潟県 長岡農業普及指導センター「令和8年 稲作技術情報」
- 新潟県 三条農業普及指導センター「県央稲作情報No.5」
- 上越地域農業振興協議会「令和7年産 上越地域米 栽培技術情報No.4」
- 山形県 最上総合支庁「稲作だより 第1号 育苗準備編」
- 青森県「稲作生産情報第7号(要約)」
- 石川県「お米ができるまで」
- 農林水産省「令和6年産 農産物生産費(個別経営体)」(e-Stat)
- 農林水産省 作物統計「令和7年産水陸稲の収穫量」(e-Stat)
- 農林水産省「2025年農林業センサス結果の概要(確定値)」
- 農林水産省 北陸農政局 食育ポスター(茶碗1杯の粒数)
- 農林水産省「子どもの食育」お米と「ごはん」
制度や数値は改正・更新されます。最新の内容は各出典をご確認ください。








